コラム

癌家族論の実践2(変革の実践編)

船戸崇史

癌家族論では、「癌はあなたの家族でありあなたに命がけのメッセージを届けるために神からプレゼントされたものですよ」とお話させてもらいました。

全てのがんのメッセージは一つでした。それは「変容」です。癌はあなたに「変わりなさい」を伝えていたのです。「今までの生き方は、本当のそして本来のあなたじゃないですよ・・・。そろそろ本来のあなたを思いだして、本当の生き方をしましょうよ。あなたはその為に生まれてきたんですよ」というものだったのです。ですから、本来の姿へ戻ると言った方が近いかもしれませんね。その意味では思い出す感覚に似ているかもしれませんね。言葉にすれば「回帰」とか「覚醒」でしょうか。
そしてこのメッセージを心より聴かれた方の生き方は本当に変わってゆかれました。仮に、その余生が短かくとも、最後の最後にそうした方の多くはこう述べられました。「癌になる前に比べて、癌になってからの人生の方が、充実していました」と。
こうした出来事は私にとってとても大きな気付きでした。「人生の価値は物理的な時間の長さだけではない。本心から生きている時間が本当の人生である」というものでした。

これを知った私は、外来においでになる癌で生きるすべをなくし、本当に苦しんでおられる方達にこのメッセージを伝える事が仕事であると感じました。そうです、自分を変革することが癌の言い分なのですから、「どうやって自分を変えるのか?」という実践的方法論が必要となってきたんです。そして前回はその実践法の1つとして「癌はその全てを知っている。だから、癌に聞く。傾聴の実践」を提案しました。多くの方がそれに取りくまれ、癌のメッセージがより詳しくつまびらかになってきました。しかし、今度は「癌からの「変革」のメッセージは分かったけれど、その具体的な手段が見えない」というより具体的な方法論を希望される意見も多々聞くことになりました。

変革の原動力

そこで今回は、より具体的な方法論としての「変革の実践」を、一緒に考えて見たいと思います。その前に、とても大切なことをお話ししたいと思います。それは、「覚悟」ということです。「覚悟」は「変容」を実行するための「原動力」だからです。ショックの大きな人ほどはっきりと覚悟も決めておられる傾向があります。そして多くの場合、その覚悟は「とうとう自分も駄目になる」という「諦め」でした。そうです、「死ぬ」覚悟だったんですね。でも、多くの場合「癌と言われれば瞬間に「死」がよぎります。どこかで「やっぱりか・・とうとう来たか」という変な納得もあると言います。でも、実は変容のためにこれが必要だったんですね。

私はこうお話します。「分かりました。では、死んだ気で始めましょう。死ぬ気になれば何でも出来ますよね」と。「死ぬまでをどう生きるかをやってみましょうか」とも言います。この瞬間に、「覚悟」されておられた方の「諦め」は「希望」に変わります。私はこの希望が大事だと思っています。誰もが、「死」の前で平等です。誰もが死にます。だからこそ、死までをどう生きるかは、実は万人全ての命題でもあります。日ごろ私たちはそう思って生きる環境にいないだけなんですね。さて、では自己変革の方法論へ入りましょうか。

身体の構成

私たち人間は肉体という目に見える部分と心、精神など見えないエネルギーの部分の2部構成になっていますよね。そして「人が変わる」とは、この両方ともが変わるということですよね。そこで、この2部構成で出来ている自分をよく見て欲しいのです。ここ数十年間の生き方の結果としての自分が今の癌を持ったあなたです。と言う事は、大切な事は癌を許したのは「今までの自分のあり方の全てに問題があった」可能性があるとまず認めましょう。次に、「あなたの体の兆候は全て、あなたのライフスタイル(思念と行為)の結果である」という事実を確認してくださいね。そして、「そのライフスタイルこそが、あなたの心(感情、思考、意思、信念)の現れ」ですから、実は、最も変換を必要としているのは実はこの目に見えない心の部分なんですね。

しかし、外来で心の変換などといっても曰く見つけにくく掴みがたく、変えがたい・・・よしんば、心の部分で原因が掴めても、どうやってそれを変えていいのかという方策に苦慮してきました。最近になってやっとそのコツが分かってきました。

心の変革は身体の変革から

実はこのコツは、仏教の中にありました。般若心経です。「色即是空」「空即是色」これは、同時に「色心不二」とも言いますね。この色というのは目に見える世界、つまり体で言う肉体を指し、空というのが見えない世界、つまり心を指していると言われています。それが、即応している、または一つ(不二)であると言っていたんですね。そして、宗教のみでなく何と、それと対峙する科学にも同じ法則を見つけました。あまりに有名なかのアインシュタインが導き出した方程式です。E=mc2。Eとは、エネルギーですね。仕事をなしうる能力と定義されます。これは目に見えません。一方、mとは質量ですから、目に見える物質ですよね。それがcである光速の2乗を係数としてイコールの関係で、結ばれていたんですね。つまり、目に見える物質m(色)と目に見えないエネルギーE(心)をイコール=不二で繋いだんですよ。まさに、E=mc2とは科学版の色心不二だったんですね。

では、これがどういう意味を持つのでしょうか?

身体の変革はまず食材

ここが大事な所です。実は、心を変えるのコツは体を変えることだったんですね。体を変えれば色心は不二ゆえ、心も変わらざるを得ません。これは、何と禅宗のお坊さんの野口法蔵上人が既に申されておられたんですね。
そして、嬉しいことに体を変えることは実は思いのほか簡単なんです。体は何で出来ているかを考えれば分かりますよね。体は、細胞?分子?その通りです。我々の体は実に60兆個の細胞の集団だといわれています。が、その細胞はどこから来ましたか?そうです。食べた食事が血肉になるんですね。私たちが口から入れたもの以外で体は出来ていません。つまり、私たちのこの物理的な体とは、呼吸した空気と飲んだ水、そして、食べた食事によって出来ていると言っていいですね。この関係は極めて重要で、私たちの身体は、空気と水と食事とイコールの関係だと言うことなんですね。ですから、今あなたが飲んでいる水、今日食べた食事がエネルギー源だけではなく、あなたの体自体を構成する細胞の原材料だったんですよね。特に水は大切です。何と体の構成要素の70%は水なんですね。ならば、現在飲んでいる水を変えれば、体の構成要素の70%は変わらざるを得ません。食事もそうですね。あなたの今日食べた食事がそのまま体の構成要素になります。細胞の遺伝子に書かれている設計図は同じですから、素材が変わっても同じ構造を作り出しますので、顔形が変わるわけじゃないですよ。組成が換わるんですね。ですから見た目には気が付かないかもしれませんが、間違いなく豚肉ばかりを毎日食べていれば豚肉製の体に、玄米ばかりを食べていれば玄米製の体に変わります。ですから癌を引き起こした今までの食事を一度勇気を持って全て変えてみるんですよ。好き嫌いは当然あります。でもそれゆえ摂ってきた食事があなたの癌の原因のひとつですから、一度思い切って全てを変えてみるんです。そして、体に起こる変調を感じてみる。吸った空気を変えるとは、主にタバコですね。当然止める。また、呼吸については内容だけではなく呼吸法(笑いも呼吸法の一つ)も大切であると言います。

身体の変革は食事の量

また、体を変えるという食事の方向にはもう一つ重要な要素があります。それは、量の問題です。私たちは、なぜか体に変調があると、治すためには体に良いものを取らなくてはいけない!と、思い込んでいる所がありませんか?でもね、実は私も外来を診ている中で何時も感じることは、現代人の食事は飽食であるということですね。食べすぎですね。実は、食べるものが悪くて病気になるより、よいものでも食べる量が多いことによって病気になっている事の方が遥かに多いと、甲田先生も申されておられます。ですから、実は、肉体を変えるためにもう一つ重要な要素は、食事を減らすということなんですね。少食です。私も、思い切ってやってみました。ここ20年以上、食べ物の食材は博子先生によってほぼ完全(無農薬、無添加、安全)な食材が入っていましたが、体重は減りませんでした。食べる量が多かったらにほかなりません。でも、食事を玄米中心で、従来の食べる量を半分にしてかむ時間を長くした所、何と6ヶ月で体重も10kg減りました。減って体調はどうかというと、当然、調子がいい。睡眠時間が短かくなっても、疲れにくくなった。食欲はあるけれど食べるとすぐお腹が膨れて食べられません。(食べれないことはないですが)まだまだ減る余地はあるのでしょうが、今の所このラインです。私の標準体重は68kgだから、現在70kgならまあまあかなと思います。こうして体重を落としてみて一つ気が付きました。この減った15kgは一体必要だったのか?と言う事です。減って元気になったなら、むしろこの15kはない方がいい。つまり無駄肉としか言えませんね。そして、考えてみれば、がん細胞は明らかに無駄肉のひとつですよね。なぜなら、癌の成長のシナリオを思い出してください。癌でなぜ人が死ぬのか?それは、癌が、成長するために、周囲正常細胞の栄養を横取りして周囲細胞が疲弊してゆくからなんでね。(これを癌悪液質といいます)つまり、癌は非常な大食漢なんですね。(これを応用したのが最新鋭の癌の検査機械の一つがPETですね。これは、宿主(癌を持った人)の血管内に標識した糖質を注射して、それが真っ先に取り込まれるのが癌細胞であることを応用した検査方法)癌末期の患者さんにあまり栄養しない方が長生きされるのは、この段階で入れる栄養分が実は正常細胞よりがん細胞へ行って、癌の元気だけを上げることがあるからなんですね。逆に言えば、正常細胞は我慢してしまう。我慢できるんですよね。これを応用したのが、癌の断食療法です。癌は大食漢ゆえ、栄養をストップすると、真っ先に飢えて自滅してしまう・・・ということは、断食や少食で減った無駄肉の中に癌も含まれるということになりますね。

そして、これら加速する方法があることも分かりました。この反応を早く行う方法なんです。それは運動です。肉体を動かす事ですね。私の経験では、散歩を30分行うだけで大いに違うと感じています。これで3000歩、約2km歩くだけで大いに違います。

さあ、如何でしょうか?まず、肉体レベルでの転換とは、

1、)食材を変更する(何であれ、食べ物が変わった分、体は変わる)
2、)食事量を変更する(無駄肉が必ず落ちる。癌も無駄肉の一つ)
3、)適度な運動をする(体の変化を加速する)

という、極めて簡単な手法で体の肉体的な変換は思いのほか簡単に出来ることがわかります。これは癌があるなしに拘らず一度皆さん実験してみてください。日ごろからこの生活に心がけていれば、無駄な細胞は出ようがありませんからね、況や日本人の死因の1位は癌ですから、最低限癌になりようがないですよ。
さあ、気が付きましたか?実はこの体を変えようという覚悟が、ほら既に癌のメッセージを聞いているじゃないですか!!「変わりなさい」という。

信念と執着

体の細胞1日200g入れ替わるといわれています。なら10日で2kg、100日で20kgの細胞が変わります。すると60kgの人は1年で大方の体の細胞が入れ替わることになりますね。ということは、体を変える努力も数年は続ける必要がある。でも、覚悟は信念と執着がありますから執着にならないように気をつけてくださいね。信念は癌を癒すエネルギーで執着は癌増殖のエネルギー源ですからね。その為、執着を間違った信念とも言います。執着と信念は似て非なるものです。どう違うか?いずれも拳を作ってエネルギーが沸き立っていますが、信念は「よし」と言って、しっかり眼を見開いているのに対して、執着は「くそ」と言って、しっかり眼をつぶっています。信念はOPENMINDですから、目的成就のためにあらゆる可能性を模索し結果、人の意見も聞き事が成就する可能性が出てきますが、執着は全くのBLINDですから、人の意見を全く聞きません。結果チャンスすらだめっと言って拒否しますから当然願いは成就できません。そして、今の自分の思いが信念か執着かを見分ける方法は簡単です。信念は「~したい」といいます。執着は「~しなければ(ねば)いけない」と言います。「~ねば~ねば」で動きかけた時、要注意ですよ。
癌からの脱却(メッセージの成就)は癌体質(ライフスタイル)の変更にこそ重点を置くべきで、その転換のコツは身体を変えること。すると法則にのっとって心の変革が起こると言うこと。ただ、執着にならず信念を持って継続すること。

如何ですか?

私の体験では、食事を変えて体重が15kg減った。すると間違いなく心も軽くなります。

さあ、癌の言い分は「変容」でした。今回は、心の変容を体の変容から始めてみる提案です。色心不二、E=mc2の実践です。今のあなたが、仮に癌の末期で西洋医学の先生からもう駄目だ、することはないよと言われても、それ間々違いです。今日あなたは生きる以上、食べなくてはなりません。なら、今日から食べる内容と食べ方を変えてみてください。実は癌は、その変容こそをメッセージとして訪れてくれたあなたの家族なんですから。あとは、信念という覚悟を持って実践することですね。