「認知症の最前線」その2 ~治療、予防編~船戸崇史
さあ、前回は認知症とはどんな病気なのか?現状は?についてお話しいたしました。 現在、認知症はどんどん増えています。それは人口の高齢化に比例するので、今後ももっと増えることは間違いありません。(65歳以上の10人に1人は認知症であると言われています)今回は、認知症の治療と予防についてお話しいたしましょうね。 認知症の定義 さて、「認知症」とは何でしょうか。それがこのスライドです。まず「記憶障害」だけではなく、「判断力の障害や計画・段取りを立てられない」+「意識障害がない」に加えて、社会生活や対人関係に支障がある場合で、さらにうつ病などを除外できた場合に認知症と診断されます。この辺がただの物忘れとは違う所です。 認知症の症状と治療 左の図から、認知症の症状です。よって治療法も、大きく中核症状への治療と周辺症状(BPSD: Behavioral and psychological symptoms of dementia)への治療に分けられます。まず、重要な事は、前回も書きましたが、現時点では認知症の根治薬はありません。 認知症治療薬 現在アルツハイマー病(以下AD)には4種類の薬が使用可能になっています。 薬にはそれぞれに特徴があります。如何に簡潔に見てみましょう。 ドネペジル(アリセプト)は、認知症の唯一の治療薬として最初に認可された薬剤です。 軽度―中等度―高度の認知症のいずれも使用できます。 ガランタミン(レミニール)は、中長期に使用した場合に他の薬より高い効果が認められています(Dual action)。 リバスチグミン(イクセロンパッチ)は、一日一回の貼り薬なので内服困難な患者への対応として有効です。 メマンチン(メマリー)は、作用機序が以上の3剤とは全く違うので、併用も可能ですし、それにより認知機能障害の進行遅延が報告されています。 いずれも、アルツハイマー認知症への適応であり、現在の所その他の認知症(脳血管性認知症、レビー小体型認知症、ピック病(前頭葉側頭葉型認知症)には適応ではありませんので、注意が必要です。(レビー小体認知症には有効との報告もある) 上に適応時期について示しましたが、それぞれに特徴があり、加えて殆どが徐々に増量する投薬パタンになっています。その為、内服は煩雑になりがちで、そうでなくとも認知機能に不安や異常があるのですから、家族によるサポートは大変重要であると言えます。 実はこの家族の関わり方が、病状(特に周辺症状)を大きく修飾すると言われています。 周辺症状(BPSD)への対応 実際、認知症の家族介護で問題になるのはこの周辺症状です。暴言、暴行、介護への抵抗、不潔行為、異食行為、性的嫌がらせ、昼夜の逆転、被害妄想などです。しかし大事な事は、これら症状には必ず理由があるという事です。よって、問題行動と言えども、最初は非薬物療法から始める事が重要です。実は、こうした周辺症状は家庭内で発生する事が多く、介護する家族の認識が一番大切であると言われています。 このなかでこの中で⑥の障害に向き合う事を強要しないとは、「出来ない事」を「一生懸命教える・させようとする」ことを「しない」だけで、BPSDが改善するケースも多いと言います。 しかし、それでも不穏がある場合は薬物療法を行います。薬物には漢方薬で抑肝散やトラゾドン(レスリン)など初期から使用できる薬剤から、重症になるにつれリスペリドン(リスパダール)やクエチアビン(セロクエル)、ハロペリドール(セレネース)まで種々あるものの、開始時期や処方は当然医師の診療が必要になります。 いずれにしても、周辺症状への対応の原則は「その意味をその人の立場で理解して対応する視点を持つ事(person centered care)」が最も重要だと言う事です。 認知症の非薬物療法 いずれも十分なエビデンスはありませんが、認知症予防には極めて期待される療法です。
まず、ADでの危険因子(促進因子)と防御因子があります。 認知症では当然ながらその程度によりますが、財産や人権を正当に認識、判断、決定はできません。以前は保護・措置制度であった禁治産制度が画一的、硬直的であると言う指摘から「自分の事は自分で決めたい」という自己決定権が重視されるようになり措置から契約へ転換が図られてきました。そして2000年4月より成年後見制度がスタートしました。成年後見制度は、法定後見制度と任意後見制度があります。前者はさらに認知症患者が判断を全く欠く場合の「後見」、判断能力が著しく不十分な場合の「保佐」もう少し軽度の「補助」の3つに分かれています。また、任意後見制度とは新設の制度で、前もって患者が財産管理や身上監護事務などについて代理権を与えると言う公正証書を締結しておき、後に判断能力がないと判断された時に家庭裁判所が任意後見監督人を選任するという制度です。後者(任意後見制度)の方が優先されます。 重症認知症患者のターミナルケア もう一つ重要な内容が、ターミナルケアです。ADは概ね発症から10年で死に至ると言われています。重度認知症患者が肺炎、摂食障害を起こした場合、約50%は半年以内に亡くなると言われています。よって、重度認知症は進行ガンと同様に予後不良と考えるべきだと言われています。(東大、山口助教) 最後に しかし、ここまで読まれたら、もう皆さんは分かりますね。今後ますます増える認知症にあなたが罹患しないという保証はないのです。なら、当然予防の生活を開始。まずは、身体、頭を使う事。食事も気を付け運動をして健全な肉体と精神を育む事。そして継続する事。そう、それも今日から・・・早ければ早いほど有効ですね。それが最も重要です。しかし、遺伝・加齢が大きな要因である以上、予防しても限界がある事を知る事も重要。やるだけやっても駄目なら・・・その場合は、覚悟が必要です。まさに、PPK(ピPンピPン生きてコKロッと死ぬ)境地ですね。
あとは、実践ですね~。共にぼちぼち行きましょうか。 |