コラム

老後を()()きと生活するためのコツ  

 (H24,1~2月号の通信「老後を健康に幸せに生きる」コツ
  の見方を変えたバージョンです)

船戸 崇史

 ここ養老に開業して20年。1ヶ月以上在宅で診療した患者数は1,027名を超え、在宅での看取りは717名を超えました。(H6,2,4~H24,12,31) 多くの魂との別れの中で、沢山の命のメッセージが残されました。同時にそれは、如何に活き活きと生ききるのか?というメッセージでもありました。今日は、その中から、特に老後にフォーカスしてみました。題して「老後を活き活きと生活するコツ」。
 私たちは今の連続の先にいずれ必ず老後となります。しかし、その老後に如何に活き活きと生活できるかは、実は老後になってからでは遅いのです。そうです、既に始まっています。今の皆さんの心がけと生活自体が、すでに老後を決めていると言っても過言ではありません。結論から言いますと、「老後を活き活きと生活するためのコツ」は1)寝たきりにならない事。と2)「まさか!」はいつもあると思うこと。に集約できると思います。

    結論1、寝たきり(要介護者)にならない事

    結論2、「まさか!」はいつもあると思う事


 では、「寝たきりにならない=要介護者にならない」事から始めましょう。


 
【介護保険の現状 ①】

  これは、厚生労働省のHPからの引用ですが、H12に、介護保険が導入されて以来、介護保険の被保険者数は順調に右肩上がりです。理由は簡単で、老人人口が増えているからですね。あと、20年近くはこの状況が続きそうです。問題は、それまで介護保険制度が継続できるか・・・ですが、年々介護保険料が増加している現状からは、このままではいずれ破綻する可能性もあると言われています。だからこそ、余計に介護保険のお世話にならないこと・・つまり要介護者にならないことこそが、重要ということですね。


【当院の現状 ②】

 では、次に当院の在宅医療の現状を見てみましょう。
(訪問診察が必要な患者さんで、当院まで来られない、つまり在宅で寝たきり~ほぼ寝たきりの方の数字です。)
これは昨年(H24年5月)のデータですが、概ねこの傾向は変わりません。

 当院での在宅訪問件数は148件で、その内訳を示しました。すると脳血管疾患が最も多く(37%)、次に認知症(24%)、整形疾患(9.5%)、心疾患(8%)、精神病、(5.4%)がん(4.7%)と続くんですね。実は、ご高齢になると、単一疾患のみの方は少なく、多くは他(多)疾患を併発しています。つまり、脳卒中+認知症+腰痛(変形性腰椎症)+難聴+視力障害+・・・という具合ですね。つまり、老化に伴って起こる機能低下を「老年症候群」と言いますが、その上に病気をきたし動けなくなり在宅医療となるわけですね。
 今回の分類は、その中であえて主病名だけで数えました。
 同時に日本人の死因も書きましたが、これは皆さんご存知のとおり。しかし、がんは死因の1位であるはずが、当院では6位(4.7%)で、死因4位の脳血管疾患が当院はダントツ1位(37%)です。これはどういうことでしょう?
 そうですね、がん患者はどんどん亡くなられる一方、脳血管疾患は亡くならない・・というか亡くなれない(死ねない)んですね。しかも、動けないので、我々が訪問するわけです。多くは自力での排泄もままなりません。テレビは遊べる人への情報ですから、自由のきかない患者にすれば、惨めになるだけ。だから、テレビの情報は遊べる人(生きる人)対象ですから観ない。ラジオも聴かない。すると、何もすることがない。一日中、同じ天井を見て過ごすしかない。いつ来るとも分からない死が時には待ち遠しくもなるようです。が、それも仕方のない事でしょう。その意味では「がん」は短時間で逝けます。当院の平均で、在宅になって1.5ヶ月です。がんで一番心配なのが痛みですが、今では多種類のオピオイドが準備され、入院並みの緩和ケアを在宅で享受できます。寝たきりの時間は長いほうが良いですか?短いほうが良いですか?
 この辺をもう少し詳しく見てみましょう。
                  


【日本人の平均寿命と健康寿命 ③】

  日本人の健康寿命と平均寿命です。一番重要なことは、日本人の平均寿命は伸びて世界一になりました。日本の医学教育が「死なせない」事を目的にしたからでしょう。それは医学の重要な使命です。しかし、その結果、大きな負債?が生じました。
要介護状態の延長です。グラフを見てください。
 現代日本人男性の平均寿命は78歳。同じく女性は89歳。しかし、何と健康寿命(自ら(みずから)が自立し、他人のお世話にならず生活できる期間)は男性71歳、女性は76歳なんですね。
 つまり、現代の日本人の平均として、男性は人生最後の7年間、女性は13年間は要介護状態にならざるを得ない(他人のお世話にならなければならない)という事なんですね。読者の皆さん。今何歳ですか?男性の70歳の方、女性の75歳の方・・あと1年で寝たきりになります?という事ですね。そして死ねるのは、男7年後、女13年後です。これはあくまで日本人の平均としてですが・・・。



【寝たきりにならないために ④】

 それは、嫌ですよね。出来たら、最後の最期まで自分の足で歩き、口で食べ、排泄も自分で行きたいですよね。人間の尊厳(自分が自分らしくある為の権利)として重要な部分だと思います。だからこそ、要介護者にならない=寝たきりにならない事が重要ですね。では、先の当院の在宅患者グラフを一度確認ください。これら病名で寝たきりとなり,その為に現在訪問診療がなされているのですが、
この疾病にかからなければ寝たきりにならなかったわけです。つまり、これら疾病にも必ず原因があり、その原因をよく知ることが、疾病予防の初歩と言えますよね。さて、では在宅診療上位の原因を見てみましょう。先にも書きましたとおり、脳卒中も心臓病も血管疾患です。加えて、認知症と整形疾患と癌をあわせれば、当院の在宅患者の実に82.4%が網羅されます。つまり、それぞれの病気の原因をよく知り、その原因を予防すれば、つまりはその疾病が予防できるので、それゆえの寝たきり(要介護状態)を予防できるという訳ですね。次は認知症です。下の表を見てください。                                                                                                   


認知症の採点


<採点法>ほとんどない=0点  時々ある=1点  頻繁にある=2点
質問項目 点数
同じ話を無意識に繰り返す
知っている人の名前が思い出せない
物のしまい場所を忘れる
漢字を忘れる
今しようとしていることを忘れる
器具の説明書を読むのを面倒がる
理由もないのに気がふさぐ
身だしなみに無関心である
外出をおっくうがる
10 物(財布など)が見当たらないことを他人のせいにする
合計
認知症の採点法
1.寝たきりにならないために(参照1)

簡単に現在の貴方の認知症の程度を調べる方法があります。左の質問に正直に応えてみてくださいね。
ほとんどない=0点、時々ある=1点、頻繁にある=2点として、設問10項目での合計点数を出してみてくださいね。
 (評価はこの原稿の最終13頁に記載)
 如何でしたか? 



【寝たきりの原因 ⑤】

 寝たきりになる、8割を占める疾病(脳血管疾患、心疾患、認知症、整形疾患、がん)の原因をまとめてみました。
すると、図のようになります。
高血圧、肥満、動脈硬化、脂質異常症も糖尿病もこれらは遺伝的気質の上に性格、食事、運動などから起こった疾病です。
ですから、いずれも、食事と運動と遺伝、性格に収束できると思われます。しかし、疾病になる原因をみると必ずしも自ら意識して訂正が効くものばかりとは言えません。老化、遺伝は元より如何ともし難い条件です。また性格も自分の顔と同じく、直接自ら見ることは困難な上に変えることもなかなか出来ません。一方、食事や運動や睡眠はまさに自分の生活習慣そのものです。今までの生活習慣にこそ病気の原因があったわけですから、間違った分を勇気を持って訂正しましょう。全ての病気の言い分は「生き方を変えなさい」なのですから。



【ストレスとは? ⑥】

 ストレスは様々な病気の原因といわれます。
それは簡単に図式化できます。つまり、ストレス=理想÷現実なんです。例えば、ある仕事をして報酬をもらったとしましょう。あなたが、1,000円は貰えるだろうと予想しました(理想)。現実に頂いたのが1,000円だったら、1,000÷1,000=1なので、ズバリ納得ですよね。
 つまり、ストレスは1が理想といえるかもしれませんが、実際頂いた金額が500円だったらどうでしょうか?ストレスは1,000÷500=2ですね。なんとストレスは倍になります。しかし、もし2,000円頂けたら、1,000÷2,000=0.5であり、ストレスは半分なんです。ただし、現実的には人間は複雑で、2,000円頂けると、なぜこんなに貰えるのか?と不安になったりもするんですね。同じく、500円なら、明らかに不満ですよね。
 不安と不満がストレスなのです。
 (ひるがえ)って、現在のあなたの生活を覗いてみましょうか。不安はないですか?「え~、このまま行ったらどうなるの?」「え~困ったな!」という言葉がある人・・不安に(さいな)まれていますよ。不満はないでしょうか?「おい!ちょっとまてよ!!」「ええ~冗談じゃない!」「常識的に考えても・・・」という言葉のある人・・不満に(さいな)まれていますよ。もう一つ重要な事は、不安も不満も癖になりますので、注意が必要です。
 前者は臆病者になり、後者はオコリンボーになりますよね。
 ではどうしたら良いのでしょうか?そうです、ストレス1を目指せば良いのです。その場合、重要なことは、現実は変えられないという法則です。あなたの外で決まっている現実はあなたには変えようがないのです。一方、あなたの思い(理想)はあなたしか変えられませんが、逆に言うと、あなたの思いだからあなたが変えられるとも言えますね。 
 ですから、全てを現実に即して生きる。現実を受け入れて生きる(という理想を持つ)ほど、ストレスのない生き方はないと言えますね。(「死ぬ時節には、死ぬが良く候」良寛)
 そしてもう一つ、ストレスのないというと、ストレス0と思われる方もおられますが、それは本来ありえません。なぜならこの式が成り立つためには、0になるには現実が0か、理想が0、または両方が0となります。現実のない社会は存在しませんし、理想のない(生きる目的のない)人間は生まれません。逆に言うと、だからこそ、私たちは、この現実社会の中で目的をもって生まれてきた魂と言えると思うのです。
 以上は私の勝手な考察ですが・・・・。



【免疫生活9ヶ条 ⑦】


 具体的な生活習慣の見直す方法(生き方の見直し)を9つにまとめました。結果的に免疫力を賦活するので、免疫生活9ヶ条としました。

 1)よく寝る。
 良好な睡眠は、身体にとって最も重要な項目です。
人は1日24時間を3で割った、8時間を他人様のため、8時間を自分の為、残り8時間を睡眠(=体の細胞のため)という認識は重要です。

 2)規則正しい生活スタイル。
 「規則正しい」というのは、実は自然界の法則なのです。呼吸、心拍、生理など凡そ何でも周期的にできています。よって、一番重要な睡眠を周期的に取る=寝る時間と起きる時間を決める=規則正しい生活といいます。体にリズムができるからです。

 3)正しい食事。
 自然界で与えられる食物は、その土地の旬しかありえません。あなたの先祖の遺伝子はそれを記憶しています。日本人の遺伝子にあった食事の取り方に戻すこと。それが正しい食事だと思います。加えて、生きた命を頂くのですから、「感謝して頂く」のは、当然の事です。「おいしくない」というのは、調理法の問題であって、食材に責任はないことを知るべきですね。食材も合掌されれば、あなたの体でよく生きようとしますよ。
 4)適度な運動。手や脚の存在意味そのものです。使うためにあるのです。手は創造。脚は運動(連携)です。連携した創造活動こそが人間の特権です。

 5)笑うこと。
 一笑い3,000個の癌細胞が死滅すると言われるほど、笑いは福の神です。(七福神、全員笑っていますね・・毘沙門天は違うか?)笑いも人間の特権ですし、大笑い10分は10kmのジョギングに匹敵するとも言われています。

 6)呼吸法・瞑想・座禅。
 内臓や心の変化が最も現れるのが呼吸です。通常、呼吸状態は結果ですが、それを反対に手段として使うのです。どんなピンチでも(=呼吸が促拍)敢えて、意識的に腹式呼吸をして呼吸を落ち着かせる。すると、結果的に心が落ち着き緊張が緩和。興奮した交感神経も安定化し副交感神経が活性化され免疫が活性化します。呼吸と心は表裏一体です。だから平常心は呼吸を平静に保てば自ずと整うのものです。

 7)加温生活。
 温めるとHSP(Heat Shock Protein)が上昇します。疲労予防、免疫賦活にとても有効です。42度のお風呂で10分、41度なら15分、40度なら20分の入浴を週2回行ってもらう。現代はどこでも銭湯がありますね。いつも入浴セットを持って行動してください。それを「銭湯態勢」と言います。

 8)思いやり・感謝。
 「思いやり」がなぜ免疫力を回復し疾病予防するのか?2つあります。一つは思いやりというと聴き心地もいいのですが、実は全ての喧嘩、紛争、戦争(=緊張状態=不健康状態)は「違いが認められない」事が原因です。皆違って皆良いとは思えないのです。まず、これに気がつくことです。そのことが既に思いやりです。2つめは思いやりの対象です。対象は他人様だけじゃなかった。実は他人様同様に大切にされるべき存在がある。そうです、自分の細胞たちです。他人様だけへの思いやりで、無理をしていると細胞たちは疲弊しとうとうある時、細胞は自滅するか反乱を起こすのです。(反乱=がん)ですから自分の細胞にも思いやりを。体に感謝する言葉かけをしましょうね。入浴時に体を洗う時に、「ありがとう、ご苦労さま」と言いながら摩ってください。加えて、自分の体を大切にすることは、実は先祖を大事にしていることにもなります。なぜなら、あなたの身体の遺伝子の半分はあなたのお父さんとお母さんから来ました。それ以外はありません。つまりあなたの体はお父さん半分+お母さん半分と=(イコール)なのです。そして、お父さんの遺伝子はそのまたお父さん(祖父)とお母さん(祖母)から来ました。そして、その祖父はそのお父さんとお母さん・・・とどんどん遡ってゆくと、あなた自身の体の全てはあなたの先祖の全ての方が入っていることになります。貴方は体を大事にすることは、同時に先祖も大事にすることなので、大いに体に思いやりを持ってください。それを先祖供養といいます。先祖は今もあなたの中で生きているのです。
 思いやりがあると自然と出る言葉があります。「ありがとう」です。これは感謝の念です。そして、感謝の念は、心から発信され、脳内モルヒネ(ベーダエンドルフィン)を分泌します。その結果、副交感神経が活性化され、免疫力がアップします。大事なことは、「ありがたい」と思わなくとも、体は「ありがとう」という言葉に反応して免疫力を上げるという事です。「ありがとう」は、言葉だけで効果のある、有り難しの言葉だったんですね。



【祈りの効果 ⑧】

 9)スピンドリフトという祈りの研究組織があります。10年以上の研究結果から①~⑦までの
「祈りの効果」が証明されました。
これは麦の発芽実験で実証されました。「祈りは実現する」「苦しい時ほど祈りは効果があり、祈りの量と効果は比例し、祈りの対象は明確化したほうがよく(数は関係なし)、祈りの経験の長い人ほど効果も大きかった」と言います。
 ただ、祈り方があって、対象は明確化するものの、結果は指示しない事が重要であるといいます。例えば、息子や孫が受験の時には、「息子が**大学に合格できますように」という祈りは、祈らないよりはるかに良いものの、「○○(名前)が**大学を受験します。どうか、○○にとって、最善の結果となりますように」と祈る。「合格」とは言わない。不合格でもそれが最善となる。病気も同じで、「病気が治りますように」ではなく、「病気が本人にとって最善の結果となりますように」と祈る。
 祈りがなぜ免疫生活と関係があり、寝たきりにならない事になるのでしょうか。答えは明快です。祈りは実現するからです。正しい祈り方をすれば、結果として生き生き生活できる事が可能になるはずです。

 次に老後を生き生きと生きるコツは、2、「まさか」はいつもあると思うことです。
 

 「人生には3つの『坂』がある。『登り坂』『下り坂』と『まさか』である」とはよく言われますね。そして、その「まさか」をいつも心しておくことこそがコツになります。まさかは病気など色々ありますが、一番辛いのは「死」です。看送る側も看送られる側も大変辛いものの、間違いなくその時はひたひたと近づいています。なぜ「死」を見据えることが生き生き生活するコツかと申しますと、覚悟が定まるからです。勿論、その時にならないと分からないと申されるかもしれませんが、実際、逆説的ですが死という避けがたい終焉を見つめることで覚悟ができ、返って「イキイキ度」の増した方は少なからずおられました。大切なことは「死」を見つめることは決してマイナスではないということです。
 「死」を理解するには2-1)死にゆく過程を理解することと 2-2)死から今を見て準備することの2つがあります。



【死にゆく過程を理解する

 まずは、2-1)死にゆく過程を理解するです。グラフを見てください。今生きているラインがL(Live)で、死のラインがD(Dead)です。
 通常、我々は最後、右下斜めにADL(日常生活動作)が低下して死に至ります。多くは、まずは食事がとれなくなり→移動能力が落ち→大小便の介助が始まり→褥瘡ができ→意識が低下し→死へいたる経過をとります。
 人により傾斜角度に差はあっても概ねこの経過に変わりはありません。(事故と自死だけは一気にL→Dへ落ちます。)ここで、重要なことはL→Dの斜めのラインとラインLとの差(⇔部分)は、低下したADLですが、自分で出来ない分必ず誰か他人のお世話にならなくてはならない部分です。介護される量ですね。ところが、昨今の日本では少子高齢化です。自宅では最後面倒見てくれる家族が少なくなった。そこで国は2000年に新たに介護保険を導入し、介護量の「量」の文字が「料」へと変換(保険収載)したのです。 言葉は悪いですが「自分のできない部分(⇔)を誰かに面倒見てもらう保険制度」ですね。ここに来て、思いもよらない日本人としての思想信条が邪魔をします。それは、「他人様(ひとさま)に迷惑をかけてはいけない」です。概ね社会生活はその通りです。しかし、生老病死でいう「病・死」だけは何とも仕方ありません。況や、死に至る過程では迷惑をかけずに逝ける人はいないのです。
 それならば、介護保険同様、介護「量」が迷惑「量」なら、介護「料」同様、迷惑「料」として事前にお支払いしたら良いのではないかと思うのです。(詳細後述)
 何人(なんびと)も迷惑をかけずに死ぬことは出来ないというと、だから「自死」を選ぶという人がいます。しかし、実は自死ほど迷惑な死はないのです。ご本人にしてみれば、「自分の存在自体が周囲の迷惑であり、存在を消すことこそが最善である」というネガテイブ思考スパイラルに陥っているため見えなくなっているだけなのです。なぜ自死が迷惑なのか?それは、周囲の家族や縁ある人は、必ず「なぜ私が止められなかったのか?私があの時にあんな事を言ったから?・・・」などなど、後悔や自責の念に(さいな)まれ、その精神的ストレスは通常の死の過程の迷惑をはるかに凌ぐものだからです。すでに自死を選んでしまった場合は仕方ありません。家族が仏前で己の行為を諭すしかないようです。自死した本人に見えるのは家族だけであり、家族の真摯(しんし)な祈りこそが唯一救うことができるようです。



【死から今を見て準備する】 
 死にゆく過程も概ねご理解頂けたかと思いますので、最期に2-2)死から今を見て準備するに入りましょう。
 準備する項目は少なく とも6項目です。

① どの病気で死ぬか?
糸口は3つ。
現在内服中の薬で考える。
家系で考える。
そして日本人の死因順位で考える。
の3つですね。先にも書きましたが、当院の訪問診察では死因4位の脳血管疾患が一番多かったですね。つまり、自宅でベッドで寝たきりで、なかなか死ねないからですね。しかも、現在血圧の薬を飲んでいるとすれば、況やです。一番長くお世話になるので(平均男7年、女13年でしたね)、迷惑料を多めに準備が必要であるということになりますね。

② どこで死ぬか?
 これは2通りしかありません。自宅かそれ以外か?です。以外と言っても病院、施設くらいでしょうか?しかし、これは最初から自宅、施設はないものです。実は最初はやはり「病院」です。しかし病院は概ね3ヶ月で出なくてはなりません。そこから自宅ですが、施設の人もいます。本当は自宅へ帰りたいのでしょうが、介護力がないと施設になります。しかし、なぜ死を前に希望する療養場所と死亡場所が違うのでしょうか? 
 
 右のスライド参1をご覧下さい。結局ひとえに「家族へ迷惑をかけたくない」わけです。しかし、6割は本当は家族と共にいたい(つまり最期も自宅が良い)のです。それなら、自宅で死ぬ準備が大切です。
 まずは、誰が面倒を見てくれるかを見極めます。問題はその人との人間関係です。
良いなら良いのですが、悪いなら早速修復が必要。現金は即効性があります。金額ですが、施設入所の場合、毎月20万円は必要です。年間240万円。しかも、日本人の平均からすると男7年、女13年は寝たきりですから、10年としたら2,400万円は必要です。
 施設へ2,400万円も支払うくらいなら、家族に渡したほうが良くありませんか?月20万円を逆算すると一日約6,600円です。きっと500円から1000円程度(貯金と相談)を感謝と笑顔を付けて渡す程度で、十分ではないかと思うのです。そのお金も、きっと回りまわって、皆さんの大事な孫子へ行くに違いありません。毎日面倒見てくれる家族へ迷惑料と言って1,000円から5,000円程度を渡したほうが、施設へ払うよりより有効な資産運用だと思うのですが・・・?

③ いつ死ぬか?
 そんなことは分かりません。死ぬまで生きます。しかし、ピンピンコロリを希望されるなら、明日には(むくろ)になっても、後悔のない生き方をしていなくてはいけませんね。

④ 財産分与の予定
 私の経験上、残す遺産は少ないほうが良いと思います。相続争いは、多くの相続遺産がある場合にのみ生じます。残すのが借金なら、死んでゆく自分へ子供、伴侶らは「この借金どうするの!」と腹を立てるかもしれませんが、ご安心ください。自分はいません。借金の場合はまず相続争いはありません。いま貯金のある方は、あなたのお金ですから、どうぞあなたが生きているうちに使い切ってくださいね。問題はどこへ出すかだけですよ。

⑤ 遣り残した仕事はないか?
 この場合、仕事とはあなたにしかできないモノコトの全てを言います。概ね人間関係の修復です。特に縁の深い家族兄弟親子間でのイザコザは、そこにあなたが関わっている場合は、あなたの遣り残した重要な仕事となります。なぜイザコザとしているのか?そこにもし自分の傲慢、意地、プライド、怠惰があるなら、必ず「自分の命」を天秤に置けば、どれも重くはないはずです。もう死ぬのです。それなら、全てを捨てて、変なプライドや意地なんか捨てて、謝ること。「ゴメンな」って。そして、「ありがとう」って兎に角言うことが重要です。その後に謗られても、笑われてもいいじゃないですか・・もう居ないんだから。でもきっとや、評価は逆になり、孫子の未来を照らします。在宅医療の経験から、間違いありません。

⑥尊厳死宣言書を書く
 そして最期、自分らしく死ぬことです。よく「その人らしく」とか「自分らしく」と言いますが、一体どういうことなのか、それは分かりません。間違いことは、あなたが生きてきたように死んで逝けます。それは、きっと千差万別の有り様があるのでしょう。しかし、その有り様を保証するものが「尊厳死宣言書」だと思っています。
  

 このフォーマットは、私が作成しました。原本は尊厳死協会の尊厳死宣言書と臓器提供意思カードの記載を一枚にしたただけですが。自分の意志として、して欲しいこと、して欲しくないことの最低限を宣言するものです。最終的には尊厳死法が法令化されていない日本では、未だこの記載が万能ではありませんが、唯一あなたの尊厳を最低限宣言する内容として斟酌してくれる風土は醸成されつつあります。問題となる医療処置の中止の希望は、現時点では困難です。(例えば点滴の中止や呼吸器の中止、胃瘻からの栄養中止など)現在行われている医療処置により、命が継続するなら、その中止により「本来の寿命を短縮させる行為」と見倣され、その結果絶命すれば「安楽死」と言われかねないからです。つまり、その医療を中止する行為は有罪なのです。



【尊厳死と安楽死】
 よって、「尊厳死」と「安楽死」を間違えないようにして欲しいということです。私たちが勧めているのは「尊厳死」であって「安楽死
(=有罪)」ではないということです。
 さあ如何でしょうか。これで、「まさか」への準備は出来ましたね。あとはどんな事態が起ころうとも大丈夫です。
 どうぞ、皆さん、これからの余生(生まれた途端から余生)を十分謳歌して、ぜひ貴方らしい素敵なキラメキの活き活きとした人生を創造くださいね。

結語)老後を活き活きと生活するコツとは、寝たきりにならないように生きることであり、まさかが起こることも想定内として生活する事なんですね。

 もう一度書きますね。


   老後を活(い)き活(い)きと生活するためのコツ

       1、寝たきり(要介護者)にならない事

       2、「まさか!」はいつもあると思う事

       3、それを今から実践する事


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 認知症 採点 さあ、あなたは如何でしたか?思いのほか、大丈夫なんですね~
   0~8点  正常   9~13点 要注意   14~20点 認知症の始まり