赤ちゃんが欲しい方へのアドバイス ~第1回~(全3回)
  
医学博士 卲輝

 赤ちゃんを望んでいるのに、妊娠しないのは大変辛いことです。一般に、現代医学における不妊治療は、人工授精・体外受精・顕微授精に代表されますが、私はそうした不妊治療と共に、妊娠を可能にするような体調の調整や体づくりが大切だと思っています。そして、それには現代医学(西洋医学)だけでなく、体と心にやさしい自然療法や漢方などを取り入れて、あらゆる面からサポートすることが望ましいと考えます。
 私は、中国の漢方医薬局に生まれ、幼い頃から中医学を学んできました。そして大学では西洋医学を学び、医学博士号を修めました。両方の医学を学んだ者として言えることは、医療現場においては患者さんのために洋の東西を問わず、持てる知識と技術はすべて取り入れていく必要があるということです。そしてこの志をもって、今私が真摯に取り組んでいることの1つが「不妊改善」なのです。
 大学院に在籍している時、私は漢方薬の抗ウイルス効果の研究がきっかけでタンポポに興味を持ち、タンポポの研究を始めました。その結果後年、タンポポの葉に含まれる有効成分である糖鎖T-1の精製抽出に成功しました。実はこのタンポポの有効成分が、不妊改善に極めて良い効果をもたらすのです。T-1成分は、こうしたことの1つ1つを確実にサポートしてくれるのです。人によって現れ方に差はありますが、使い始めると新陳代謝が良くなり、浮腫がとれる・冷え性が改善される・尿が出やすくなるなどが自覚できます。これが体質改善されてきた証拠です。

 妊娠しやすい体を作ることは、それほど難しいことではありません。ただ、少しの努力は必要かもしれません。あとは、借りられる力はできるだけ借りること、助けてもらうことです。私はその1つがタンポポのT-1成分だと思いますし、中国の昔からの健康法の知恵も一助となると考えます。
 原因不明の不妊で悩んでいる方、もう高齢だからと半ば諦めかけている方もいらっしゃるかもしれません。本文には、そんな不妊で悩んでいる多くの方々に希望をもっていただきたいという願いが込められています。どうぞ、前向きに妊娠しやすい体づくりを目指してください。
「定期的な性生活を送り、特に避妊などをしていないのに2年間妊娠にいたらない場合」を医学的に不妊症と定義します。
 なぜなら、1回の排卵につき出産を期待できる割合は10~25%と考えられており、それで計算するなら、月に1回の排卵日に合わせて性交が成立したとすると、平均4か月~10か月で妊娠することになります。実際、健康な男女が結婚して通常の性生活を営んでいる場合、1~2年のうちに約90%が妊娠しているとの結果が出ています。つまり逆に言うと、赤ちゃんが欲しいのに恵まれないという方も多く、およそ10組に1組のご夫婦が不妊症に悩んでいるということになります。
 30年ほど前までは、不妊症は一方的に女性に問題があると考えられていましたが、男性不妊が解明されるようになり、今では不妊の原因は男女半々ぐらいの割合であると考えられています。そして、その原因は非常に多岐にわたり、さらに複数の原因が重なり合っていることもあります。
 いずれにしても加齢とともに妊孕能(にんようのう)(妊娠しやすさ)は低下しますから、早めに検査を受けて原因を見つけ、的確な治療を受けることが望まれます。


 さて、主な不妊(女性側)の原因には次のようなものがあります。

【卵管の異常】
 卵管の異常は、女性側の原因の中では最も多いものです。卵管は非常に繊細な働きを持っていて、壊れやすいガラス細工のようなものですから、何度か卵子をキャッチしたり、卵管周囲の癒着などがあるとたちまち機能が低下してしまいます。
 卵管の異常がさらに進むと、卵管狭窄(卵管が狭くなる)や卵管閉塞(卵管が詰まる)が起こります。卵管にダメージを受けると、卵巣から飛び出す卵子をうまくキャッチできなくなったり、たとえキャッチできたとしても卵管の中を子宮までうまく卵子を運べなくなり結果、不妊症となります。

【排卵の異常】
 卵子が育たない、育っても排卵できない状態です。
 妊娠しやすい女性には、1か月に1回のペースで排卵が起こり、妊娠のチャンスが訪れます。この排卵が数か月に1回になることを稀発排卵といい、まったく排卵が起こらなくなることを無排卵と言います。こうなると妊娠は望めません。
 排卵は脳の視床下部・脳下垂体・卵巣の3者がうまく連携して初めて起こるものですから、このいずれに異常があっても無排卵となります。また、視床下部は大脳皮質の影響を受けますから、強いストレスや感情の起伏も無排卵の原因となります。
 ちなみにこの排卵の異常は、女性の不妊原因としては2番目に多いものです。

【子宮内膜の異常】
 子宮内膜は、卵巣ホルモンの働きにより子宮の内壁に増殖する組織で、受精卵のベッドとなるものです。月経の出血とともに剥がれ落ち、体外へ出て行きます。
 この子宮内膜に異常があると、せっかく受精しても受精卵がうまく着床できなかったり、着床しても流産してしまいます。子宮筋腫・子宮内膜症・性感染症・人工妊娠中絶による子宮内膜の癒着などが主な原因です。

【子宮頸管の通過障害】
 子宮の入り口である子宮頸管を、精子が通過できないという障害です。代表的なものに抗精子抗体があります。また、頸管粘液の分泌が少ないため精子がうまく通過できないこともあります。

【骨盤内の病変】
 子宮内膜症・腹膜炎・開腹手術の後遺症などによって骨盤内に癒着が起こり、卵子の成長や排卵が阻止されて不妊となるものです。



 一方、男性不妊の主な原因は以下のようなものです。

【造精機能障害】
 精巣で精子がつくられにくくなることをいい、乏精子症・無精子症・精子無力症などの症状が挙げられます。

 乏精子症………精液中の精子の濃度が薄いもので、一般的には精液1ml中 精子数2000万以下を言い、自然妊娠の可能性が低くなります。さらに精子濃度が500万/ml以下になると、自然妊娠の可能性は著明に低くなります。

 無精子症………精液中に精子が全く見つからないものを言います。自然妊娠は期待できませんが、精巣上部や精巣そのものに精子が見つかることも多いので諦めることはありません。

 精子無力症………精子の運動能力に問題があるもので、精液中に動いている精子の割合が50%を下回るものを言います。自然妊娠の可能性は低くなります。

【精子輸送路通過障害】
 精子の通り道である精管が先天的な異常、または開腹手術や事故の後遺症などによって細くなったり塞がってしまい、精子が通りにくくなった状態です。

【機能性障害】
 射精ができなかったり、勃起ができなくなることです。

【副性器機能障害】
 精嚢炎・前立腺炎・膿精液症などにより自然妊娠が難しくなります。

【奇形精子症】
 正常な形をした精子が30%未満の場合を言います。この場合授精が起こりにくくなり、自然妊娠の可能性はやはり低くなります。
 その他、逆行性射精(射精された精子が膀胱に逆流する)や、染色体異常が不妊原因の場合もあります。



 日本では昔から慣習的に、不妊は主に女性に問題があると考えられています。子供ができないことで女性は苦しい立場に立たされ、夫婦間だけではなく、嫁姑の問題に発展するということも過去には多くあったようです。しかし、実際は不妊は女性だけに原因があるとされるのは約40%で、男性のみ、または男女ともに原因があるとされるのが45%といわれています。つまり、およそ半分は男性側にも何らかの異常があるということです。
 そうした男性不妊の原因のほとんどは、精子を作る機能に関することです。WHO(世界保健機関)の基準では、1回の射精量が2ml以上、精液1ml当たりの精子の数が2000万以上、運動率50%以上、奇形率15%以下を正常とし、この基準に達しない場合を男性不妊症と診断しています。つまり、精子の数や精子の運動率が妊娠にはとても重要なことなのです。
 近年、「現代男性の精子数・質が著しく低下している」というショッキングなレポートが次々と出されていることはご存知でしょうか。
 1992年にはデンマークのスカケベック博士らによって、過去50年間の男性の精子数が平均1億1300万個から6600万個に半減しているという論文を発表し、話題になりました。
 一方、フランス衛生監視研究所の研究者らは、1989年から2005年までの17年間にパートナーの卵管障害が原因の不妊症で体外受精を受けた男性2万6609人の精子濃度・運動率・正常形態率を調べました。その結果、調査期間中に精子濃度が32.2%、年に1.9%の割合で減少していることがわかりました。また、同じ期間の正常形態精子は33.4%減少でしたが、運動率は49.5%から53.6%に上昇していました。しかし、精子の質に影響を及ぼす生活習慣などを考えると、全体傾向はもっと悪化していると考えられるとしています。
 日本では、1998年に帝京大学医学部の押尾茂講師(泌尿器科学)らによる調査で、日本人の20代男性の精子の数が40代前後の男性に比べ半数しかないというレポートが出されました。東京近郊に住む20代男性50人と、37~53歳の男性44人の精子数を比較したところ、1ml当たりの平均精子数が40代前後の男性は8400万個に対し、20代男性は4600万個ほどしかなかったといいます。
 こうした精子減少などの要因に、環境ホルモン(内分泌撹乱化学物質)が挙げられていることは周知のとおりです。
 精子が正常より極端に少ない場合を乏精子症といい、精液1ml当たり約5000万個の場合を軽度、1000万個以下を中等度、100万個以下を重症度と区分しています。また、精子が全くいないことを無精子症、精子の運動率が低下する病態を精子無力症といいますが、いずれにしても子供がなかなかできないという場合は、妻ばかりに責任を押し付けず、男性も1度精液検査を受けられることをお勧めします。そして後述するように、女性が妊娠しやすい体内環境をつくることが大事なように、男性も妊娠させやすい体内環境をつくることが大事です。
 では、どのようなことが不妊の原因になるのでしょうか。次回、一緒に考えてみましょう。


                                                    次回へ続く