Reborn外来とは(従来のNON病外来) 

船戸 崇史
 
 皆様、あけましておめでとうございます。
 あっという間に平成も28年が始まりました。政治の情勢や気候変動だけではなく、仕事の在り方、人間の在り方、生きる目的まで、ここ数年地鳴りのように大きく変化しているように感じているのは私だけではないと思います。まさに、「今、貴方はどう生きる?」というテーマを突き付けられている様に感じます。つまり、「今までの生き方でいいの?」という感覚です。
 平成27年を代表する応募漢字一文字が、清水寺森清範貫主により「安」と書かれましたが、何と2位は「爆」3位は「戦」でした。爆や戦が心情を占めるからこそ、「安」が求められたんでしょうね。しかし、だれもが、戦、爆など願いません。それにも拘らず、なぜ戦、爆が起こるのでしょうか?
 一体どこに、その種、根はあるのでしょうか?同時に「安」は一体どこにあるのでしょうか?私は「一人一人の心の中」だと感じています。
 どうも、誰の中にもあるこの「安」「戦」「爆」から、どれを選ぶかだけの問題のようです。いずれにせよ、現在の社会情勢も、環境問題も、私たちの病気すら、実は今までの私たちの生き方の結果であると言い切れますよね。それなら、どうするのか?それは、同じ心の中にある、「安」を探しそれを選びながら生きる生き方へと転換する事しかないのではないでしょうか?つまり、今、必要なことは「生き方の選び方を変える」事。そうです、「変化、転換、再生」ではないでしょうか。必要なことは、単なるreset ではなくrebornだと思うんのです。(resetは手段、 rebornは結果です)
 私の医療のテーマは「癌」治療ですから、癌医療の現場でこの「Reborn」を考えてみました。
 すると、だんだん分かってきたことは、前回の通信にも書きましたが以下の3点だったのです。



【 Rebornへの基本認識(前回101号通信参照) 】
 
 ①人は治るようになっている。人は「自然に治る力を持っている」。これを「自然治癒力」といいます。これは鉄則です。しかし、私たちは癌に係らず、病気になります。なぜでしょう。それは、自然に治る力を「邪魔していたから」だったのです。

 ②癌にならない人はいない。しかし、一方で癌が出来ない人はいません。早い人は3秒に1個。遅い人でも30秒に1個出現すると言われています。しかし、実際癌細胞を大きく発育させる人は2人に1人。その為、2人に1人が癌になると言われていますが、正確には2人に2人とも癌は出来る。しかし、本来人は自然に治る力を持っており、発生した癌はすべて消えるようになっている。これを免疫力と言う。この免疫力が落ちた時に癌が増殖する。免疫力を落すとは、その人の生き方、生活習慣の問題で、免疫力を阻む生き方(習慣)をしてからに過ぎない。それなら、まずはその事実に気が付く。そして勇気をもってその生活習慣を卒業し(例えば、卒煙、卒酒、卒義務、卒我慢・・卒戦、卒爆・・)、生き方を見直し、新しい楽しくも感謝と笑顔ある生き方(安)へと変革する(reborn)。
 ここで、注意点があります。それは、「癌を治す」ことを目標にすると(しがちですが)、「癌を治すために生きる」という癌治療が生きる目的にすり替わる可能性があると言う事。私たちは、癌治療のために生まれてきた訳ではないので、この目的は間違いですね。注意が必要です。

 ③そしてもう一つ重要な鉄則が、癌が治らなければ人は死にますが、癌が治ってもいずれ死ぬと言う事実です。
 これを宿命と言います。重要なことは、人は死ぬものと言う厳然たる鉄則でありながら、それを受け入れたからと言って早死にはしないと言う事。それどころか、この鉄則を受け入れた人ほど「生きようとされる」し、「生への感謝」を述べられると言う事です。そして、この認識で病気を治す(敵対、戦)から共存(許容、安)という姿勢が芽生えると言えます。
 


【 Reborn外来とは 】

この話を一時間かけて行うのがReborn外来(従来のNON病)外来です。

 今一度Reborn外来についてお話しいたしましょう。
当院では、進行癌の患者さんが多いですが、一応西洋医学的な治療を遣りつくして来られます。しかし、最近は自ら、西洋医学的処置をお断りしておいでになる方も増えてきました。しかし、私は西洋医学否定者ではありません。確かに大きな問題を含んでいる部分はありますが、外来でお伺いする弊害はむしろ西洋医学と言うより、医師の言葉遣いや思いやりのなさです。つまり会話が成り立たないと言う事です。この点は、まず医師とて私も反省すべき点は大いにあります。わたしでなくとも、同僚の事ですので、まず陳謝いたします。しかし、一言弁解を許されれば、その高慢な態度や下手なコミュニケーションの原因は、その医師が「悪い人」なのではなく「多忙すぎる」に尽きると思います。ですから、ぜひ賢い患者になって頂き、横柄に見える医者の態度も「そんなものだ」と大目に見てあげてください。貴方の病気を治そうとするチームの一人なのですから、その人と喧嘩しても病気を治すと言う目標は達成できません。しかし、どうしても無理なら、さっさと医者を替えましょう。自分の命を懸ける以上、信頼できる医者、話せる医者が最低条件ですから。
 さて、Reborn外来とは何かですが、2つの大事なコンポーネントがあります。
1つ目は、自分の病気(癌)の原因は自分の今までの生き方に原因があった事に気が付く。2つ目は本来で本当の自分はいったい何がしたいのかに気が付く。の2つです。2つ目の本当にしたいことは、癌が治ったらしたい事と言い換えても良いです。
 方法は、
 1)癌が出来る仕組みと治る仕組みを学ぶ  2)今までの生活習慣を見直す  3)新たな生活習慣が出来るまで(概ね3か月程度)の間は副作用のない安全な治療(補完代替医療Complementary Alternative Medicine CAM)を提案し出来る範囲で実践して頂く。以下にこの方法を簡単に説明します。
 


【 1) 癌が出来る仕組みと治る仕組みを学ぶ 】
 






















 癌が出来る仕組みと治る仕組みでは図の如く、癌細胞が発生し治る過程を大まかに書きました。
 右上の正常細胞がストレス(図中、①~③)により遺伝子が傷つき、殆どは細胞死(アポトーシス)をきたしますが、その一部が癌細胞へと進みます。これは全ての人で起こります。早い人は3秒に1個、遅い人で30秒に1個の割合で癌細胞が出来ています。ですから、癌にならない人(癌細胞を作らない人)はいないのです。しかし、出来た癌細胞は免疫系の働き(最終的にはNK,CTLなどのリンパ球)によって駆逐されます。これは、より上位の自律神経の支配をうけます。そしてその上位には心の在り方がホルモンを介し影響を与えている事が分かっています。(この上流から下流への流れの研究を「精神‐神経‐免疫学」といいます)ストレスは、正常細胞の癌化を促します。同時に最も上位の精神や交感神経へ刺激を与えます。最も下位の顆粒球は白血球の一種ですが、これは癌細胞を煽る(あおる)事が分かっています。同時に副交感神経を抑えリンパ球の活性を落します。つまり癌細胞の抑制が出来ない。だからできた癌細胞を消し切らないのです。しかし、ストレスがあっても、それを打ち消す生活(良眠、正食、運動、加温、微笑、団欒生活)をすれば、適切な緊張状態と適切な安楽状態から適切な免疫状態が確保され、癌細胞は出現しますが、全て消滅するのです。これを、私は「本来で本当の普通の生活」と言っています。癌は出来る物。しかし、消える物。体は治るようになっている。ここが重要なんですね。



【 2)今までの生活習慣を見直す 】
 
 次に重要なことは、その為の新たな習慣の形成です。癌患者の生き方は謂わば「癌になる生活」、つまり「癌生活」ですが、それに気が付いていません。癌になって初めて、「ええ?」となる訳です。私も、他人ごとではなく、1分のがん告知を受けた時には、流石に信じられず「・・ええ!?何かの間違いだ・・」と思ったくらいですから。日ごろ病気と無縁な人が混乱するのは当然だと思います。やはり自分が癌だと分かったら、まず生活の見直しが重要です。
 見直すポイントは6つ。スライドの①~⑥ですね。実は今回から⑥家族団らんが加わりました。癌は免疫不全ですが、この免疫力を考えるのに家族のかかわりが大きいということです。患者と家族は掛け替えなく繋がっており、クラブチームを応援するサポーターと選手の関係に似ています。決して、サポーターはピッチへ降りられません(癌を替われない)が、応援団(家族)のいない試合は張りのないものですね。⑥含め現在(今まで)の生き方を転換する事が重要です。(①~⑤の詳細は通信101号参照)本当は、性格含めて全てをリセットする事が良いでしょうね。これを全人的変容と言いますが「別人になる」という事です。しかし、にわかには難しいので、最低限生活習慣を正しく見直すことは重要です。根本に性格がありますが、その結果の現れとしての生活習慣①~⑥が出来ていなかったから癌細胞が増殖したのですから、丹念に①~⑥に照らして修正をかけるのです。睡眠は?食事は?運動は?加温は?微笑みは?家族仲良し?ですね。私は「性格は変えられないから生活を変えよう」とお話しします。
  しかし、兎角一度のお話で人生が変わる事は難しい事です。しかし、癌だと言われたからこそ、手術や抗がん剤など嫌な治療を受けざるを得なかったからこそ、そして一度自分の人生の線引きを考えたからこそ、初めて「命と真剣に向きあう」事が出来ると感じてきました。体に言わせれば「やっと、聞く耳を持ってくれた」とも言う感じなのでしょう。



【 3)その間、当院の補完代替医療を紹介 】
 
 私は西洋医学を否定しません。しかし全部を肯定もしません。先に医者の問題を提起しましたが、ここでは癌治療に関して、やはり抗癌剤などは効果はありますが、最も難しいのは止め時だと思います。理屈からして、「治す」治療ではないので、どこかで区切って中止する必要があると言う事です。
 そこで、見切りをつけて当院へ来られるのですが、当院でご紹介できるのはスライドの如く、①~⑧です。(⑧はステージが早期の場合です)この治療法は、西洋医学と決定的に違うのは、副作用がないか少ない(ほとんどない)事。ただし、一般の山ほどある民間療法との違いは、エビデンスがある事。しかし、問題点は保険がきかないため高額になりがちだと言う事です。しかし、まず3か月行う事で体に合うか否か分かりますし、例え効果が得られなくとも、病気の意味に気が付き、生き方を転換しようとすることは、結果論的に私は素晴らしい生き方だと思うのです。

 その姿を必ず孫子は見て育ちますから、生き方の遺伝子はこうして連綿と受け継がれるんだなって在宅医療の中で感じさせて頂きました。
 



【 当院のCAMと死生観へのアンケート 】
 
 そこで、今回このNON病(Reborn)外来の意味や死生観について、治療法として高加温のオンコサーミアを導入してから当院でこうしたNON病(Reborn)外来と代替医療を行った患者さん128名にアンケートを行いその感想をお聞きしました。進行癌(StageⅣ)の患者さんが多い現状を鑑み、アンケート記入者はご本人かご家族のいずれでも可能としました。
 以下に、主だった項目について供覧します。
 アンケート対象総数128名。返信44名。回答率34%。なお44名のうち現在生存されるご本人からの回答は36名で8名がご家族からの回答であった。

 【アンケート結果】
男13名。女29名。男平均年齢65歳。女平均年齢58歳。男は60歳代が最も多く8名。女50歳代が10名と最も多かった。
 


 【NON外来の意義とおこなわれたCAM 】
 NON病の意味について大変あった人は23名。まあまああったと言う人は11名で、意味がなかったと言う人は0であった。その他5名は、遺族の方の返信で本人が他界のため、評価できないという結果であった。
 行われた補完代替医療(CAM)は当院では高濃度VC+温熱療法(高加温ではオンコサーミア or インディバ)または、マイルド加温 + 還元電子治療 + リンパ球点滴 + 低用量抗癌剤治療 の組み合わせで行われ、高濃度VC点滴治療が最も併用率が高かった。



 【病名とステージ分類
 病名はスライドの如く乳癌、子宮卵巣癌が各々10名。肺癌6、胃癌5、大腸癌3、膵癌3などであった。ステージは3/4がStageⅣであった。



 【癌の原因とあの世の価値観
患者さんが自分で考える癌の原因である。①ストレス②多忙③食事④生活習慣などは複数回答。中には、「自分を助けにやって来た」という回答もあった。あの世の価値観の重要性は重要と答えたのが21名で、重要でないの3名よりはるかに多い。死後の世界観(あの世の存在)が、闘病生活に励みを与えている可能性があると推察された。



 【癌前と癌後の人生点数】
 自分の価値観で人生に点数をつけてもらった。
 癌前の自分の人生点数と癌体験後の人生点数である。興味深い事は、癌前より癌後の方が点数が上昇した人が22名。低下した12名より10名多かった。平均値をとるのは個別に理由がある以上大きな意味はないが、全体としても平均72点から76点と少なくとも癌になる前より後の方が点数が高い傾向が見られた。上昇した人の中には、100点満点だが癌後に180点と評価する人があった。癌が素晴らしい気付きを一杯くれたからと評価した。一方、癌前より大きく低下した人は90点→10点が2人。80点→0点が1名であるが、そのうち1人は癌前こそが充実の人生と評価された。その結果、癌後が不便であり、健康であることにこそ意味があると応えられた。2名はご家族からの回答で、「生きて居て欲しかった」ので0~10点という家族の心情が吐露された。



 【疾病利得1】
 疾病利得について聞いた。疾病利得とは、癌は悪いばかりでもなく、癌になったからこそ分かった、癌にならなかったら分からなかったことなど、癌になればこその利得を言う。
 すると、スライドの如く様々な利得が挙げられた。それをまとめると、概ね「感謝、ワクワク、生き方の見直し(変える)、自分を大切に、希望を持つ、義務感を捨てる、食生活見直し、卒酒、卒煙、家族との絆等」であり、これらは癌の言い分とも言えると思われた。



 【疾病利得2】
一方で良いばかりではなくスライドのように「辛い、不安、高額、治る事が重要、仕方ない」などの意見もあった。



【疾病利得についての考察
 疾病利得1と2を並列に並べて考察すると、疾病利得1の境涯を持たれた方々は疾病利得2での内容を思わなかったとも考えられず、その意味では疾病利得2は患者さんご本人の場合は「途中経過」である可能性があると思われた。ただし、家族の心情としては、やはり大切な人を失った心痛が大きく、(アンケート記入8名はご家族であり、1年以内の治療経験者を対象としたため、まだ亡くなられた場合は1周忌も済んでいない状況)逆にグリーフケアの重要性が垣間見えたと思われた。



【当院での補完代替医療(CAM)の感想】
 
 当院で行っている補完代替医療CAMについては、StageⅣと進行した癌患者であっても、概ね良好の感想が聞かれた。同時に、VCは冷えやのどの渇き、温熱療法は熱さなど治療法ゆえの不快感を訴えられた。抗がん剤の副作用は実際の
QOL(quality of life)QOD(quality of death)を貶める様な辛いもの(吐き気、骨髄抑制、赤疹、しびれ、脱毛など)であり、これは大幅に患者さんのADL(日常生活動作)を損なうものである。その点、当院で行っているCAMによりADLが損なわれないことは、それこそが意義あることと思われた。

 今回は当院で行っている、Reborn外来について主にお話しいたしました。重要なことは、今まで「病気」と言うと、医療の問題であり、医者に任せ、医者の言う通りにしてきました。しかし、本来、病気は貴方の生き方ゆえの結果であり、「治してもらう」という受け身の姿勢から「自ら生き方を転換する」ところから治療を開始すると言う姿勢こそが重要であると再認識下さい。主導権を持つと言う事。間違っても医者に渡してはいけません。勿論信頼は重要です。しかし、医者はアドバイザーでありサポーターですが、貴方の運命の支配者ではありません。医者に悪気はありません。いやそれどころか正義観や使命感から「私に任せて~」と真面目に頑張ってすらいます。ただし、「治す」の一点だけに関心があるので、それを超えたとたん(必ずその時は来る)無力になり無気力になってしまうのです。本来、医者に治せるものではないのです。貴方しか治せないのです。なぜなら、貴方が作ったのですから。ここを理解した患者になりましょう。癌は命がけの病です。言い方を変えると「癌は命を懸けて生き方の転換を促している」とも言えるのです。それをしているのは本来で本当のあなた自身です。変わってほしい。生き方を変えてほしいと言っているのです。癌は本来で本当のあなた自身が遣わしたプレゼントなのかもしれないのです。
 
 「戦」から「安」への転換(Reborn)ですね。今年から一人一人の心の中で「戦」から「安」を選択する生き方を始めようではありませんか。Rebornの時代を一緒に歩みたいと願います。
  こうしたことを相談する外来がReborn外来なのです。