これからの時代を生きるコツ 

船戸 崇史
 前回は「当院のがん治療の基本認識」の1)人は治るようになっている2)がんにならない人はいないについてお話しいたしました。
今回は、3)がんが治らなければ逝くが、がんが治ってもいずれ逝くをご紹介しようと思っておりましたが、先に今回のメッセージが来たので、こちらをご紹介したく思います。それで、3)は次回にご紹介させて頂きたく思います。

 
 今、不透明な時代、先の読めない不安な時代に突入していると感じているのは私だけではないでしょう。しかし、なぜそう感じるかと言えば実はその原因(情報元)は、複数かもしれませんが必ず在るものです。その情報が、自分にとって想定外であれば尚更、先が読めなくなったり、漠然とした不安に支配されたりするのは当然かもしれません。
 さて、そうした昨今だからこそ、そんな時代をどう生きたら良いのでしょうか?
 これからの時代を生きるコツとはあるのでしょうか? 皆さんはどう思われますか?
 結論から申し上げれば、私は「求められる人になる」事だと思っています。
 「不安満ちる今の時代」とは「不安解決できる人が待たれる時代」だからこそ、これからの時代は「不安解決できる人」が「時代に求められる人」だと言えます。
 「求められる人になる」とはそういう事です。
 では、どうしたら「求められる人」になれるのでしょうか?

 求められる人の4つの要素とは?
 ①先の読める人
 ②その存在が生きがいになる人
 ③人間力のあふれる人
 ④夢を語れる人
 総じて1つの顔とは?
 ⑤笑顔の人

 私の医療介護の経験からそれは「具体的に4つの要素を持ち、総じて1つの顔を持った人」だと感じています。
 この「人」の欄に、立場や職種を入れてみて下さい。夫婦でも事業所でも良いと思います。
 夫、妻、友人、医師、看護師、医療者、介護者、企業人、行政、店、会社・・・
 何でも良いと思います。
 それこそ、これからの時代に求められていると私は思うのです。
 



1) 先の読める人

 私は昔はメスを握っていました。手術も沢山させて頂きました。胃がんとか大腸がんとかが多かったですが、手術は一人ではできません。術者の前には第1助手や第2助手、横には看護師(器械出し看護師)と麻酔医などがチームとして関わり一つの手術が出来て行きます。手術とは典型的なチーム医療であり一人でも欠けては手術が出来ません。特に術者にとって、手術はリズムで運ばれる事が多く、往々にしてリズムよく進む手術は出血量も少なく手術時間も短く済みます。前立ちという第1助手と機械出しの看護師との呼吸はとりわけ重要で、特に術者は術野から目が離せないため、次に使う手術用器具を口で告げ右手だけ右の看護師に出すという風景が繰り返されました。(現在の内視鏡手術は少々様相が違いますが) 問題は、時として術者が目の前の局面でどの器具を使おうか?と迷う事もありました。その時に、器具の名前を言わず手だけ出すこともありました。すると、その(てのひら)にピシッと器具が来るのです。「これを使え」という事なのです。
 先の読める、そして内助の功を感じる場面でした。



2) その存在が生きがいになる人

 私は、(うたい)をしております。もう1年以上になりますが、まだまだ新米でうだつが上がりません。上手になれないのですが、最も大きな原因は素質と練習不足です。それなら、続ける意味があるのか?と誰もが思われるでしょう。私が一番思っています。しかし、なぜ続けるのか?それは偏に師匠なんですね。岐阜を代表される(つづみ)の後藤師匠の人格です。人として素晴らしい方で、道は違えど、その先にこうした人になりたいなという願いを引き出される人です。そのため、鼓のためというより、先生に会いに伺っているようなものです。先生にとっては迷惑かもしれませんが。

 年はあまり関係ないように思います。当院の若いリハビリスタッフ(PT)が訪問しているがん末期の患者さん宅で言われた言葉を思い出します。
「彼(PT)は私の孫くらいだけど、一生懸命やってくれるの。彼の為に頑張らなくっちゃね」どこか、ご自分のお孫さんと重なったんでしょうか?生きがいは、その直向(ひたむき)さに感動して引き出される事もあるようです。



3) 人間力にあふれる人

 そもそも、人間力って何でしょうか?特に医療福祉介護の世界にあっては、専門的知識技能は重要だと感じておりますがそれだけでは務まりません。加えて相手を思いやる気持ちだとか、寄り添う気持ちは事のほか重要だと感じてきました。そして、この思いやりや寄り添いの気持ちは座学では学べません。私の経験では、まさに「体験」を通してしか学べないものだと思っています。
 医療者は簡単に「オムツしたら良いじゃない?」「バルン(尿の管)を入れたら良いじゃない?」「手術したら良いじゃない?」なんて言いますが、私のがん手術体験では、正直に申し上げて「されて初めて分かる」事は多いです。特に、オムツもバルンも手術もされて初めて分かる事も多いです。「された(受けた)」こともないのに、「すれば?」は時に冷たく横柄に上から目線に感じるものでしょう。当然ですね。私は、医療者は満身創痍の人が良いと言っていますが、それは偏にその先に共感力が育まれると思っているからです。是非医療介護を志す、または現在その職に有る人はせめて一度「オムツ」で尿をしてみて下さい。それをしなさいと言う前に。
 知識を得るには「汗」が必要です。努力です。共感力を得るには「涙と痛み」が必要です。つまり、私は人間力は「汗」と「涙」の量に比例すると思っています。
沢山、汗と涙を流した人ほど医療者には向いていると思います。今目の前の人の「涙」の理由が分かるからです。



4) 夢を語れる人

  以前にも通信で紹介したことがありますが、やはり重要なメッセージだと思いますので、もう一度一緒に見てくださいね。外国のある村での煉瓦職人の話です。

 旅人が居ました。彼はある時旅に出てA・B・Cという町を訪問しました。

Aという町ではAという煉瓦職人が煉瓦を積んでいました。旅人は聞きました。
  旅人;「何をしてるんだね?」
   A ;「ご覧のとおり、1日中こうして煉瓦を積んでいるのさ」

次にBという町へ行きました。B町にもBという煉瓦職人が煉瓦を積んでいました。
  旅人;「何をしてるんだね?」
   B ;「ご覧のとおり、一日50ペソで働いているんだよ」

最後に旅人はCという町を訪問しました。ここにも煉瓦職人Cが煉瓦を積んでいました。
  旅人;「何をしてるんだね?」
   C ;「私はここに教会を創っているだ。仕事に疲れ、生活に困っている人たちがここでホッと安らげる場を創っているんだ」

旅人は、旅から帰りました。そして10年後また同じ町をA・B・Cと巡る旅のチャンスが訪れました。
まずAを訪問しました。
Aという町の煉瓦職人Aは今日も煉瓦を積んでいました。

Bという町へ出かけました。しかし、ここには煉瓦職人Bはおりません。同僚の煉瓦職人に聞きました。
  Bの同僚;「Bか?彼は、ずーと前に、もっと実入りの良い仕事に変わったよ」

Cとう町に行きました。ここにも煉瓦職人Cはいませんでした。しかし、そこには大きな教会が建っていました。そして、Cさんはそこで牧師さんになっていたのでした。

 前回、このお話をご紹介した時には、私は「どの煉瓦職人が良いとか悪いではありません、ただ今の心が今後の人生を決めるという事ではないか」とお話ししました。
 しかし、「求められる人」となると違うと思います。
 私は間違いなくCさんだと思うのです。何が違うのでしょうか?
 そうです、Cさんだけが「夢を語っている」からだと思うからです。
 そして、私の夢。それが「リボーン洞戸」なのです。(その4に続きます)
 


5) 総じて一つの顔とは?

皆さんイメージしてみて下さい。
1) 先が読める人、2)その存在が他人(ひと)の生きがいになれる人、3)人間力ある人、4)夢を語れる人とは、一体どういう顔をして、今、あなたの前に存在しますか?
 私は、心に深い微笑みを(たた)えて今を生きている人をイメージします。その人は、暖かな眼差しで静かに笑っているのです。
 笑顔の人は安心できます。それはきっと自信があるからです。
 笑顔の人は傍に居たくなります。それはきっと心暖かだからです。
 笑顔の人は頼りになります。それはきっと心に余裕があるからです。
 笑顔の人は真剣に寄り添ってくれます。それはきっと今をしっかり生きているからです。
 もし、そんな人になりたいなら、形から入ってみるのも一つの方法かもしれません。そうです、あたかも、可愛い赤ちゃんを見つめる気持ちで、微笑んでみましょう。
 いつも、どんな時も、~にもかかわらず微笑んでみるのです。
 すると、軽くなって楽しくなってくるかもしれませんよ。
 これからの時代、先行きが分からない不安多き時代だからこそ、それにもかかわらず微笑んでいる人が求められているのではないかと私は思うのです。それは、特別な誰かが求められているのではなく、今の貴方の微笑みが待たれているのです。
 早速、開始ですね!~微笑みたい?~微笑み隊!