私のがん克服術
 

船戸 崇史
  

 私の腎がん手術ももう10年前になります。
2007年の検診で左腎臓に6cmのがんが見つかり、愛知医大で2008年3月に手術体験をしました。それまで消化器外科医として、多くの人のがん手術をさせて頂いた経験から、逆に手術を受けると言う体験は正直に申し上げてわくわくと楽しみだったことをよく覚えています。勿論、このわくわくは手術後に木っ端微塵に消滅しましたが・・・。この痛みは二度と御免だと。

 6cmの腎臓がんと言ってもステージでいうとⅠbで、当院の泌尿器科の金親医師に言わせれば、「取って終了の簡単なやつよ」と言われました。しかし、発覚当時48歳で、手術以外には放射線も抗がん剤も効かない私の腎臓がんは、それまでの沢山の経験とは全く違う体験でした。1人称であるという事です。そうです、「私自身の体験」と言う事です。つまり、「がん」という病名を「言う(告知する)」と「言われる(告知される)」では大違いで、やはり言われてみて初めて分かる心境がありました。このがん宣告の前に複数のがん患者さんから「先生、がん患者の気持ちはがんにならないと分からないから・・」と言われましたが、まさに成程と思いました。
 「がん」という響きには、その進行度(ステージ)に関わらず、やはり一度人生の終了を予期させ、今後の家族の事(子供は3人ともまだ学生)、クリニックの事、医師会や友達の事など最悪の事態を想定して考えるものです。いくら「取って終了」と言われても、常に最悪に備えると言う医師の(さが)からか(はげ)ましにしか聞こえません・・でも、それが普通かもしれません。

 今、私のリボーン外来に来られるがん患者さんは概ね進行がんで既に西洋医学的になす術のないと診断された人(StageⅣ)が多いです。
「何か他に良い治療法はないか?」という質問が一番多いです。
 私は、「人は100%がんを作っていますが、本来だと自然治癒力があり100%治るようになっています。しかし、がんだと診断されたのはがんを消せなかったからに過ぎません。がんを消す邪魔をしたのです。何が邪魔をしたか?それはあなたの生活習慣です。」と話します。

 まず、がんは降って湧いた災難ではなく、間違った自分の生活(習慣)にこそ原因がある事に気付いてもらう事がとても重要だと話します。自分で作ったなら、自分で消せるからです。悪しき生活習慣を是正し、より免疫活性出来る生活を心がければ、身体は本来治るようになっているからです。そうでなくては、ここまで多くの末期のがんと言われた患者さんが治るはずがありません(「がんが自然に治る生き方」ケリーターナー著、プレジデント社)。

 でも、がんと診断告知されてすぐに、なかなかこの生き方の転換まで冷静に考える事の出来る人は少ないです。
 さて、私の場合どうするかです。これは当院で行っているがん補完代替医療の実践が出来ると思いましたが、そもそも西洋医学を否定していないので、同様の患者さんが来られれば、何と言うかで考えてみました。



 Fさんへのがんの説明 

 48歳男性。左腎臓がんStageⅠbという患者さんが来られたと想定して私はこうお話しするでしょう。仮に名前をFさんにしましょう。

 「Fさん、まず切れる(手術)ものなら切りましょう。手術が出来ると言うのは恩寵です。切らずに治そうなんて、がんを(あなど)ってはいけません。Fさんが補完代替医療に関心があり、既に多く実践されているならそれは評価します。しかし、それなら尚更手術に勝る補完代替医療はない事をご存知ですね。がんは総合戦力で対峙(たいじ)すべきですから、出来ましたら手術前から術後も然るべき補完代替医療を併用ください 。
 しかしFさん、ご存知かと思いますが、重要な事は、切って取ってお終いではありません。同じ生活習慣が続けばまた出てきます。当然です。
ですから、がんの原因が分かったら、それを早速訂正し新しい生活習慣で生き始める事が重要です。しかし、既に遺伝子の変異は起こってしまっています(正常遺伝子ががん遺伝子へ変異している)。再度、がん遺伝子を正常遺伝子へ戻す必要がありますが、最低3か月間の新しい(正しい)生活習慣が必要です。それまでの間(3か月間)は、当院で積極的にがんの原因である活性酸素を除去し免疫力(リンパ球活性)を活性化する治療(補完代替医療)を併用ください。最も重要な事は再発予防の生活習慣です。
 スタンフォード大学のデータから、これが再発予防の60%を担っているとわかっています。併用する補完代替医療は10%に過ぎません。残りの30%は遺伝的体質です。がんは腎臓がんStageⅠbと言われたからと言って侮ってはいけません。がんを消せない今の生活が続けば間違いなくStageは進みます。当たり前です。」とお話しするでしょう。
 ここまで言われれば、手術を受けて、その前後で補完代替医療を実施するという方向性は明らかになります。
 それで私は早速手術を受け、生活習慣の改善に着手し、その前後で補完代替医療を実施したのです。



 がんの三角形から健全な三角形へ 

 そして次に聞きます。これが一番重要な根本的な質問です。
 「ところでFさんの腎臓がんの原因は何だと思われますか?
 がんの三角形をご存知ですか
 一番ベースに遺伝や体質、性格などがありその上に生活がある。その生活が正しく習慣化すれば、老衰。しかし、正しくない生活が習慣化すると、がんが出てくる訳です。よく性格が悪くてがんになったという話を聞きますが、基本的にがん性格はあります。我慢して頑張る頑固者ですね。しかし、この信念で人様の為に生きるこの生き方は同時に日本人の美徳だったりもします。ですから、がんの原因は悪ではなく無理なのです。まさに美人薄命。しかし、必ずしもこうした性格の全員ががんになる訳ではありません。重要な事は、まず間違った生活があり、それをがん性格で継続した結果、間違った生活習慣となり、がんが消せなくなったに過ぎないという事です。
 そして、この生活習慣を私は5+1にまとめています。5は免疫活性を(おとし)めるもの。+1は悪しき習慣です。まずは1、睡眠 2、食事 3、温度 4、運動 5、呼吸(笑い)です。

 +1はタバコ、過量な飲酒、過体重、慢性感染です。ですから、まず先の5つをがんになる生活習慣で言うと、
1、不眠生活習慣 2、お手軽食習慣(軽食生活習慣) 3、冷え冷え生活習慣 4、運動不足生活習慣(短足生活習慣) 5、むっつり生活習慣ですね。
+1は、加えて喫煙、過量な飲酒、過体重、慢性感染など一つでも該当するものがあるとがん準備状態と言えるのです。全て該当する人は時間の問題です。若ければ若いほど(40代は若い方(ほう))がんが出てくる理由は、複数のがん生活が関係している可能性があります。一度チェックしてみて下さいね。
 こうして、性格は変えず生活を変えるのです。するとがんの三角形から、本来で本当の自分の人生となり本来の老衰へ健全な三角形へと向かうはずなのです。」



 Fさんのがんの原因 

 当時、私も40代。ちょっと早いと思いました。しかし、正直に申し上げて、私はがんになるとは思っていませんでした。がんになるのはもっと頑張っている人だと思いました。だから、まだまだ頑張りが足らない私ががんなどなるはずがない・・・というのが自己評価でした。しかも、頑固にそう思っていたので、知らないうちに頑張っていたのかもしれません。結果的には身体に無理を掛け続けていただけ?そういえば、この頃は診療中に寝る(瞬間的に)事もありました。病気と言うより慢性的な睡眠不足があり、これも原因だったのかもしれないと思うようになりました。
 がんを認めた時に、平素患者さんへよく話すように「がんの言い分」を聴くべく左腰(左腎臓部)に手を当てて静かに言い分を聴きました。しかし、がんは何も言わない。いや、何も言わないんじゃなくて、実は「分からないほど『当たり前』の中に原因がある」というメッセ―ジだと後から気が付きました。頑張って働くのは「当たり前」。出来なきゃ出来るまでやるのが「当たり前」。しんどくても頑張る(我慢する)のが「当たり前」・・だったのです(実際そこまで出来ていたかは別問題)。「当たり前に注意」と言っていました。

 そこで自分の生活習慣を振り返りました。どこにがんの原因があったのか?
 タバコはやらない。お酒も飲めない方。体形は少々自信なし。しかし、一番当たっていたのが、睡眠不足。基本的に深夜0時前に寝る事は無く、殆ど午前2時過ぎだった?平均5時間以下の睡眠時間。(だから翌日の診療中も少し意識が飛んで失礼した)
 運動は五体投地を毎日108回と読経含め30分程度の儀式となり、これは良い運動でもあり、呼吸法でもあり、朝のお勤めになると言う一石三鳥の優れもの。しかし、開始してまだ1年程度だったので、十分な予防効果にはなっていないかもしれない。同時にこの頃は合気道に週1回程度は豊川の道場へ行ったが、診療終了後に子供たちを名古屋でピックアップして片道2時間での稽古通いは、帰るといつも深夜過ぎ。途中で眠たくてサービスエリアで仮眠を取って帰ると言う事もしていたが、今から思えばこれも子供たちと一緒に稽古後の夕食が楽しみだったからかもしれない・・が、身体には無理でしかなかったかもしれない。
 食事はやはり肉食系でやや過食気味、味のしっかりしたものを好む傾向があり、早食いの傾向あり。残す事は嫌い。あまり添加物などを気にすることもなく、時間も不規則だった。
しかし、結婚前と比べれば結婚後は博子先生のご指導でかなり改善したと思っていた。が、相変わらず食事全般の注意はあまりしていなかったように思う。(この辺は全て今と比較してですが)
 呼吸法、特に笑いはもともとが笑い上戸(じょうご)なので、よく笑っていたと思う。ので大丈夫。
 加えて睡眠不足からかいつも頭痛があり、毎日NSAIDS(鎮痛剤)を服用していた。これは、不必要な冷えを引き込んだ可能性がある。

 以上から、まとめると私のがんの原因となる誤った生活習慣は、1の不眠生活が最も大きい。2の食事も現在の内容からすれば、かなり嗜好性の強い添加物の多いものであったと反省できる。3の冷えは消炎鎮痛剤により強制的に促していた可能性がある。4の運動はそこそこしているつもりだが、この当時はその結果睡眠不足を助長している。唯一合格点は5の笑う(呼吸法)だけ。



 Fさんのがん克服術 

 手術が終わって、その後がんの原因が間違った生活習慣に有った事に気が付き、早速生活習慣の転換を始めました。どこに間違った生活習慣があったかが分かればわかるほどこの転換は容易になります。

 私のがん克服法
1、
不眠生活→良眠生活を徹底した。術後10年たった今も、深夜0時は最期のリミットと判断し必ず就寝する。一方朝は早くに目が覚めても午前6時半(できれば7時)までは布団にいて、身体に休めよ~って言っている。(最近天外伺朗さんが、無分別智医療という言葉を提唱された。無分別智医療とは、身体は意識しない、判断しないところで身体は分かり治ろうとしており(身体智)それを敢えて知識で分かろうとせず、そのまま受け入れて生きる在り方を根幹に据えた医療を言う。私は深くて良好な睡眠時こそがもっともこの力が活性化していると思っているし、最新の科学でも証明されている。「寝るが一番この世の華よ」は母がいつも言っていた辞世の句。かくいう母も白血病で60歳で他界したが・・だからこその心境かも・・参考 洋泉社MOOK「最高の睡眠」快眠習慣が脳のパフォーマンスを引き出す)

2、 お手軽食習慣→正食習慣へ。まず一番大事な事は、全ての食材に罪はないという事。よって、感謝して頂く事は最も重要。「食事=身体」は法則である。しかし、がんの好きな食事と嫌いな食事があるので、極力がんの嫌いなものを摂るようにする。野菜類、根菜類、海藻類、豆類などはがんは苦手。またカテキンやウコンも嫌い。一方がんの好きな物は、精製したお砂糖、小麦、酸化した脂質。がんもスウィーツは大好きなので注意。少なめに、出来たらがんが目に見えなくなるまでは中止する。以上の事は最近は徐々に解禁されている事も多いが、博子先生のお蔭で十分コントロールされていると思っている。

3、 運動しない短足生活→運動生活は、その後も毎日五体投地は108回を読経と共に毎朝の勤めとして行っている。結構汗だくになる。祈りと言うより、師匠の野口法蔵師よりチベット体操と思えばいいと言われたので、体操だと思って行っている。しかし、それ以外の運動は少ない。

4、 冷え冷え生活→加温生活は、特に術後はHSP入浴法を気を付けて行った。また西式健康法で温冷浴は今も行っている。20度くらいの水風呂と40度程度のお湯とを交互に入る方法。最初は水風呂からで1分ごとにお湯→水→お湯・・・と繰り返し、7回目の水で出る。しかし、毎日ではなく週に2~3回程度である。勿論、消炎鎮痛剤はNSAIDSは服用は極力していない。頭痛はいまでもあるが、アセトアミノフェン(カロナール)500mg程度の頓服で(しの)いでいる。月に1回程度。そして、夏場はエアコンが効いているので極力靴下をはき、冷えが足元から入らない様に注意している。

5、 むっつり生活→微笑み生活は、基本は呼吸法。もとより、よく笑いましたが、現在は積極的に坐禅断食会を年間3回は行っている。たった3日間の断食と坐禅であるが、4か月の間にたまった心身の塵芥を宿便と共に出してくれる優れた浄化法だ。これは間違いなく、一生に一度は体験されることをお勧めする。たった3日の断食とはいえ、永劫食べない死に際にも、心身の準備としてとても有効だと思うからです。嘘だと思われたら一度ご参加ください。判断は逝く時にならないと分かりませんが。

6、 私の場合は10年前に手術を行い、抗癌剤も放射線も効かないこともあり、その後半年間は補完代替医療を行った。週一回は高濃度VC点滴を実施。加えて、HSP入浴療法を行った(この当時はまだオンコサーミアは入っていない)。また、還元電子治療も毎日行った。


 これが、私の術後の生活習慣です。性格は変わっていませんが、生活を変え今でも心がけています。その結果、10年の歳月が経ちました。西洋医学的には、何もそこまでしなくても、手術でしっかり取れてるんだから遣りすぎじゃないの?と言われかねません。かつての消化器外科医の私ならそう言ったかもしれません。しかし、今は違います。
 私の腎臓がんの細胞は今でもあると私は思っています。しかしそれでいいのです。消し切らなくとも、私の免疫系さえしっかり働いていてくれれば、このがん細胞君と仲良く一生を過ごせればそれで良いと思っています。
 私自身は意識して、その環境を整備するだけで良いのです。



 身体を大切にする意味 

 いま、がんが私に教えてくれた一番大きなこと。それはがん細胞も含む全ての身体の細胞たちへの感謝の想いです。この細胞たちの遺伝子は間違いなく私の両親から正確に半分づつ貰いました。そして、生まれてから今までの水と空気と食事でこの身体は出来ています。この身体を大切にするとは、少なくとも両親を、そしてそのまた先祖をも大事にする事であり、いま地球上にあるあらゆる食材や環境に感謝する事でもあるのです。
 毎日、お風呂に入って身体をこする時、「塵よ無くなれ~垢よ無くなれ~きれいになーれ」だけではなく「今日も働いてくれてありがとう。あなたのお蔭で今日も素晴らしい一日でした。ご苦労様。」と心を込めて優しく擦ってあげてくださいね。
 きっと身体も応えてくれると私は信じています。