一番したいことは、なあに? デパートツアーに行ったの訪問看護婦 小寺 満紀
Aちゃんは18才ある出来事が原因で、一日中ベッドに横になっています。お話もできません。1年前に退院、当クリニックの訪問看護がはじまりました。 その時より、AちゃんとAちゃんのお母さんとのおつき合いが始まりました。 Aちゃんは、少しずつですが、大きな目をパチパチさせたり、ぎゅっと目をつぶったりと、表情が豊かになり、私もうれしく思っていますが、内心、どうにか意識が戻らないかしらと祈っていました。 が、西洋医学的には、むつかしいということも分かっていました。 お母さんは、Aちゃんを18才の女の子らしく髪の毛を結われ、お父さんはぬいぐるみをベッドの回りにかざられています。この子のためならいいと思われることは、してあげたいとお母さんは言われます。 ある日、Aちゃんは精神科医、越智啓子先生の診察を受けました。 この時先生は、 「この子は幸せになるために生まれてきた。」 だから、「今、きっとAちゃんがしたがってると思うことをしてあげてね。」と言われました。 私は、何だかうっすら光をみた気がしました。 院長先生は、「じゃあ、さっそくやろう。」と、にこにこして言われました。 お母さんは「Aちゃん、デパートに行きたいねぇ。いっぱいきれいなお洋服見たいねぇ。」こうしてデパートツアーが決定しました。 さて当日 ───────── 前の日は雨で、天気予報も雨。みんな祈りに祈り、むかえた朝は、カラッと青い空。 ありがたい!! 私と男性スタッフの杉浦くんと松井くんがいさんでAちゃん宅におじゃますると、Aちゃんはもうお化粧をうっすらとして待っててくれました。 とってもかわいいAちゃん。杉浦くんと松井くんはボッーとみとれています。 車イスにのせて外へ出ると、日の光を浴びてAちゃんはまぶしそうに目をパチパチ… そして、いざデパートへ! お店の中にはいり、帽子、アクセサリーお洋服を見て歩きました。 Aちゃんにお帽子をかぶせて、 「キャーかわいい!」サングラスをはめて「すてきね」 Aちゃんはお店の明るさ、熱気、にぎやかさに圧倒されているようでしたが、次第に、いつもの表情にもどってゆきました。 お買物の途中で、お母さんが私にあるプレゼントをして下さいました。 それはAちゃんとおそろいの”マザーグースの森の犬の抱き枕”です。 とってもかわいいです。ありがとうございます。 このツアーの中で、お母さんは人目を気にせず、生き生きとすばらしい表情をしておられました。私は、一年前からは想像もできないほど、”お母さんは強くなられた”と思いました。 楽しく、うれしく、無事にデパートツアーも終わりました。きっと、Aちゃんにも伝わるものがあったと思っています。その名も「刺激療法」 そして、いつか、Aちゃんの目覚める日がきますように──────── |