コラム

ショウ先生と・・・また、行ったチベット旅行”

細川明子
8月16日から13日まで、ショウ先生とまたまたチベットに行ってきました。
去年、第1回目のチベットツアーは今年も同行してくれた、中国国際旅行社のガイド、陳さんが「思い出したくないです。」と、ふと本音を漏らしてしまったほど、突然来られなくなった越智先生。予定通りに全く飛ばない飛行機。高山病にふりまわされたものだったので、” 今年はいったいどうなることやら”と、帰ってくるまでどきどきでした。
しかし、私たちの期待・・・、いえ、不安もよそに(予定通りじゃないというのは意外と面白いものなんですよね)今回はすべて予定どおり!去年も行った人達は最後まで信じられない気持ちでした。そして、ひどい高山病で入院する人もなく、みんな無事帰ってきました。

チベット2日目。
朝まだ暗いうちからホテルを出発して夜明けとともに始まるお祭りに出かけました。
ショトン祭と呼ばれるこの祭りのメインは、仏像が描かれた横50メートル、縦80メートルの大きな「タンカ」というじゅうたんを夜明けとともに広げるのです。
このお祭りのために、チベット各地からたくさんの人が集まってくるそうで、タンカが広げられる山の斜面の周りに私たちが着いた時には、すでに大勢の人達が祭りの始まりを、今か今かと待っていました。


だんだん空が白んできたとき、遠くから音楽とともにタンカが運ばれてきました。とにかく大きいので、丸めて運ばれてくる姿は、まるで龍が山を登ってくるようでした。タンカが広げられ、その日一番最初の陽の光を見たとき、みんなそれぞれの想いで祈りました。
チベットの光は強烈です。標高が高く、太陽に近いという上、今回は8月だったので、日差しはとても強く私たちに降りそそいでいました。でも、その日差しは、空を真っ青に、雲を真っ白に輝かせ、山の稜線を際立たせ、そこに息づく命を曖昧なくはっきり輪郭づけているようでした。

いっしょに行ったある人が、草原が広がるモンゴルは、ただ光があふれていたけれど、山がたくさんあるチベットは、あふれる光をそれによって作られるはっきりした影があると言っていました。
「世界の屋根」と呼ばれるチベットにはこれでもか、これでもかと言わんばかりに山が連なっています。山に他の山の影がうつり、その上を動く雲の影が走ります。
そんな、光と影と同じような歴史をチベットは持っています。
長年、中国政府から弾圧されたチベットの人たちは、どんな想いで文化を守ってきたのか想像を絶します。ダライ・ラマたちは亡命することで守ろうとし、他の僧たちはとどまることで守ろうとしたと聞きました。


去年もお会いした生き仏様・・・活仏マニさんに、今年も会うことができました。とどまることで守ろうとしたその人たちから、私達は一体の大変美しい仏像を頂きました。いっしょに行ったみんなにとって、それはとても嬉しくいろんな想いを抱かせて頂いたと思います。
私は、まっすぐ生きる力のようなものを感じました。
今年85才の生き仏様に来年もお会いできることがとても楽しみです。


チベット4日目
標高4,900メートルのカンバ峠に向かいました。途中、幻の花と言われるブルーポピンズがあるかもしてないと、みんなわくわくした気持ちで、窓の外を眺めます。
去年通った同じ山道は、5月頃まだ寒い時期だったので、幻の花どころか、ただ石がごろごろした不毛の地でした。
今回は8月なので、去年と同じ所に来ているとは思えないほどいろんな花がそこに咲いていました。
最初のブルーポピンズを見つけたのは誰だったのか・・・、バスを止めてもらい、みんな外に、まるで子供のように飛び出していき、高さ20~30㎝の空と同じ色のブルーポピンズを囲みました。他にも、エーデルワイズやわすれな草、いろんな色の花が咲いていました。

気が付くと、高山病になってはいけないと、動きを自制していたことも忘れ、あんな所に花が、あんな所に水晶がと、斜面を登ったり降りたり・・・。わはは、わはは、と大はしゃぎ・・・!
でもふと気が付くと、ここは空気が薄いチベット。酸素ボンベが大活躍。バスの中はまるで、深海を潜っているような、シュー、シューという音でいっぱいになりました。

神様の湖、ヤムドウク湖でお水を汲み、また4,00メートルの峠に戻ろうとしたとき、雲の切れ間からヒマラヤ山脈が光って見えたのです。峠でバスを降りたとたん、誰からともなく峠の横の、登ればヒマラヤ山脈がもっと見えるかもしれない丘に登り始めました。





丘のてっぺんはほぼ、標高5,000メートルだったと思います。空気が薄い中、そこまで登るのはとても大変だったけど、眼下に広がる神様の湖、連なる山々の向こうでヒマラヤ山脈を見たとたん、疲れは一気に吹き飛び、地面に寝転がると、その場のすばらしいエネルギーが感じられました。
そして、みんなで輪になって手をつなぎ、唄をうたい、オイリュトミーをし、気功をしました。



大きなものが私たちを包み、それぞれがそれぞれに「ありがとう」と感謝の気持ちを伝え合いました。
こうやって、ここまでこられたのもみんなのおかげ。あなたがあなたでそこにいてくれたから、いま、私はここにいる。「ありがとう」ーー。
みんなひとりひとり光って見えました。


この旅で何回「すべてはうまくいっている」とカニ踊りをしたでしょうか。生き仏に仏像を頂いた後、お寺の境内でのカニ踊りを若い僧侶たちが見ていたけれど、どれほど私たちが嬉しかったか伝わったかなぁ?
チベット空港で、中国の空港で、名古屋空港でもカニ踊り!
「すべてはうまくいっている」どこでも、ここでもカニ踊り!

こうして、私たちの今年のチベット旅行は幕を閉じました。