コラム

治るからだのつくり方

邱 紅梅
正気と邪気のバランス
がんのような難しい病気になった方々が、漢方や東洋医学、鍼灸、気功などの話を聞きに来られます。そういった方を見ていると、漢方でいう『正気』と『邪気』とのバランスを間違えて考えていることが多いようです。
漢方では、治癒力を高めるにはひたすら補うことだけではないし、攻撃するだけでもない。そのバランスが大事です。

『正気』は、からだの営みを行うと同時に、悪いものを攻撃する力。
『邪気』には、ばい菌とかウイルスのような外性のものもありますが、漢方ではむしろ内性のもの、からだの中の『邪気』を重要視してます。

例えばがんの場合、免疫力や抵抗力は『正気』の部分に当たります。細胞の異型性や変異、食品添加物の長期的な摂取、ストレスのような要因が『邪気』に当たる。
『正気』が弱まり、なおかつ内性の『邪気』が高まると、病気や不調になる。けれども、『邪気』がすごく悪い条件であっても、『正気』が強ければ、すぐにがんになることはないし、『邪気』に気を付けていても、『正気』が弱ければどうにもならない。

ですから、自然治癒力を高めるには、『正気』と『邪気』のバランスをとることです。『正気』を高めると同時に『邪気』を避ける。外からの『邪気』は完全には避けられないので、『正気』のバリやーを高くするのです。
がんの人は、アガリクスのような『正気』を高めるものを飲んでいる人が多いです。最近、卵巣がんを再発した女性は、レイシやアガリクスなどを二年間、毎月15万円もかけて飲みつづけていました。よく聞いてみると、どうも『正気』を高めることばかりに目がいっていて、『邪気』を減らす努力をしていない。仕事は忙しいままで、食事をおろそかにしている。『邪気』がどんどん入ってくる状態でした。

『正気』と『邪気』は不変なものではなく、体質や時期(術後、抗がん剤、放射線照射など)、環境(仕事や家庭など)によって左右されます。



体質を受け入れる
同じ環境で生活している同年齢の人でも、生まれ持った体質は違います。
漢方的には、この体質の違いは『先天之精(せんてんのせい)』(賢に蓄えられているもの)によるものと考えられています。
漢方には、『気』、『血』、『精』、『津液(しんえき)』という考え方があります。『津液』には日本の漢方でいう『水(すい)』に当たるもの。
『精』は『気』、『血』、の大元です。『精』には、『先天之精』と『後天之精(こうてんのせい)』があります。

『先天之精』は、親から受け継いだ特徴です。親が違えば、『先天之精』の違うので、『正気』のレベルが違いますし、『邪気』も違います。からだに『邪気』をつくりやすい体質というものがあれば、『正気』が不足がちの体質もあります。

『後天之精』というのは、生まれた後の生活や努力によるものす。同じ親から生まれた兄弟でも、食生活や仕事などの環境が違えば、『後天之精』は違ってきます。
そうすると、トータルの『賢』、『精』が違ってきますし、引いては『気』や『血』も違ってくるのです。これが、漢方的な考え方の基本です。

『お血』というのは血が滞りやすい、血が汚れやすい、悪性良性にかかわらず、異常増殖を起こしやすい状態の人です。親にそういう傾向があれば、子にもある程度同じ『内性の邪気』が出やすいといえます。
『正気』と『邪気』のバランスにおいて、1~2割は体質との関係があると考えられます。

また、漢方では『未病』を治すという発想が強いのですが、この『未病』を視野に入れると、体質の部分も大きな参考になります。今は元気でも、両親や祖父母ががんで亡くなったとすれば、先天的な『精』が弱いのかもしれないので、後天的な努力が必要です。
若いうちから、体を整えていかなくてはならないということになります。