コラム

もうひとつの高脂血症の考え方

船戸 崇史

高脂血症。「要するに血液がドロドロなんですよ…。」とか言われ、生活習慣病の影の主役とも言われています。
これ自体は何ら症状を出しませんが、高血圧や糖尿病などの生活習慣病があると、俄然威力を発揮します。
酸素と同じように、それ自体では燃えませんが、助病性?が高いということで注目されてきました。
…というと、何か黒き影が忍び寄っているかのようですが、本当にそうなんでしょうか?

ここでちょっと違った意見が一つ。
そもそも脂とは何でしょうか?これは、必要以上に体に供給された栄養分を一番効率の良い形で体に貯えたものなんですね。何と、人類が誕生して以来、300万年とも500万年とも言われますが、殆どの時期において、人類は飢えとの戦いでした。毎日、狩猟や樹木の実の採取に追われ、その日を生存するのがやっと、食物が無いときも度々で、そんな中で体や種を維持することは大変だったんですね。
人類にとって、エネルギーの貯蓄は極めて大変で、大切な命題でした。そして、その時代が何百万年と続けばおのずと体にエネルギーを貯蓄するための遺伝子が組み込まれますよね(というか、そうした遺伝子を持った個体のみが生き延びますね。)
そのおかげで、僅かしかなかった食物をエネルギーとして貯え、飢えや寒さから体を守ってきたんですよ。つまりは、高脂血症を来す体質のおかげで人類は生き延びたと言えるんですね。
殊に子孫を宿し、育む働きをかけられた女性には顕著でした。現在でも女性はその遺伝子の働きで、お肉を食べていないのに、血液の脂が高いのは過去の人類の遺産なんですね。
90歳を超えて、高脂血症である人に「脂が多いですね。食生活の問題ですよ。」とは決して言わないこと。
「食べもんが悪けりゃ、今まで生きてこれんかったわな。」と言われます。
満足を求めて至った飽食の時代、しかし求めるものを間違っているのでは?という警告なんでしょうか…私たちの高脂血症は。