今、一番何がしたいですか介護福祉士 松井英樹
Kさんはある事故が原因で、一日中ベットにねてみえます。わずかながら右腕を伸ばすことができます。 ぼくが院長先生の往診に同行した時に、先生がKさんに聞かれました。 「今一番、何がしたいですか。」 「パチンコがしたい。」 と、小さい声でKさんが答えられました。 パチンコ!なんとKさんは、障害を持つ以前はパチンコが大好きだったのです 院長先生は、 「じゃ、いきましょうか。今度の日曜日。」 と軽く言われて、 「松井くん、段取りをしっかり考えてね。」…。 ぼくは早速、近所のパチンコ店に行きましたが、パチンコ台には椅子が固定されていて、車椅子が入るスペースがない…という絶体絶命のピンチに立たされてしまいました。 こうなれば、ダメでもともとと、パチンコ店の店長さんに訳をお話ししたところ、こころよく協力していただき、車椅子のスペースが確保できました。 さて当日、(前日から”雨よ降らないで”とお祈りして)Kさんは少し緊張気味。 Kさんと奥さんと院長とぼくはいくぞ!やるぞ!とパチンコ店にのりこんでいきました。 店内に入った瞬間にKさんはあの♪タンタカターン♪のメロディにむかえられ、思わず涙、涙、涙、が、そこは勝負師。 パチンコ台の前に陣どるなり、目は微動だにせず、わずかに伸ばせる右腕をしっかりレバーに固定して、いざ決戦!! (神様どうかよろしくお願いします) な!なんと2回もフィーバーが! やった!やった!出た!出た! おお、うれしい、こんなことが!(ぼくは神様に感謝します)ぼくと院長はジェットコースターに乗っているような叫び声でワォーッと叫び続けました。 イケー!イケー!イケー! たっぷりと出た玉を運ばせていただきながらぼくは心からうれしかった。 パチンコ玉はビール(→ぼく)、お菓子(→訪問看護婦)に変身しました。 そして、Kさんのカルテにはビールとお菓子の写真が貼ってあります。 あぁ、秋のビールのなんとうまいこと! |