コラム

JunJun先生の第1回 Jun環器講座

「期外収縮(きがいしゅうしゅく)」って?

循環器内科 中川 順市

健康診断の時にしばしば指摘される心電図異常の一つにこの「期外収縮」があります。若くて健康を自負しておられる方でも、自分では全く症状がないのに健診をうけたら『「期外収縮」という不整脈があるので精査が必要です』と言われることがあります。また、“時々脈がとぶ、脈が抜ける”というタイプの動悸を自覚されている方は、この「期外収縮」がその原因であることが結構多いのです。今回は少しこの「期外収縮」について書いてみたいと思います。

心臓は通常、一定の周期で拍動し、心拍数60回/分なら時計の秒針のごとく1秒に1拍の一定間隔(周期)で打ち続けます。心臓には心拍を作り出す、言うなれば“王様”のような“洞結節(どうけっせつ)”という細胞の塊があり、これが時計の水晶発振のように正確に電気刺激を作り出し、「刺激伝導系」という強固なネットワークの“家来”達を使って心臓全体に命令としてこの刺激を伝えて心臓の筋肉を収縮させます。これが心臓の拍動となるのです。本来この命令刺激とネットワークは絶対的で揺るぎないものなのですが、この“王様”やその命令を伝えるべきネットワークが、何らかの原因で一時的にでも弱まり、“王様”の統治力が落ちると、普段おとなしくしていた他の細胞がまるで“反乱分子”のように単発(時に2連発)の横やりの刺激を入れてきて正常の周期の拍動を邪魔します。正常の周期以外のところに横やりの刺激による収縮が発生するため、これを「期外収縮」というのです。これは若くて健常な人にも生ずることがあり、その場合アルコールの飲みすぎや睡眠不足、疲労、ストレスなど「自律神経」に影響する物事が誘因になることがあります。この場合、運動の刺激で“王様”や“家来”たちが奮い立ったり、休息、睡眠により“王様”が癒され、本来の力を取り戻せば、“反乱分子”である「期外収縮」はおとなしく引っこんでしまうが多いのです。

したがって「期外収縮」そのものはいわゆる“良性の不整脈”と判断されることが多いのですが、心臓のある部位に何らかの障害が存在していると、そこから異常な電気信号が発生し、喩えるなら“強大な新興勢力”のように“王様”の通常の統治力をもってしても抑えることができない強さの横やりをいれてくることがあります。これも、はじめは「期外収縮」として顔を出してきますが、さらに勢力が強くなると意識障害や心停止に繋がる“危険な不整脈”に姿を変えていくことがあるので注意が必要です。

このような場合、“心筋梗塞や心臓弁膜症・心筋症(炎)などの心臓病による心臓の障害・負担”が原因であったり、“心臓以外の病気(例えば腎臓病やホルモンの病気)による体内の電気刺激の発生・伝達に関わるミネラルのアンバランス”が原因であったりすることがあります。

以上から、「期外収縮」において大切なのは、決していたずらに恐れる必要はないことと、「期外収縮(反乱分子)」そのものに注目することよりも、その背景に原因として隠れているかもしれない「心臓病や心臓以外の病気(強大な新興勢力)」の有無について、一度はしっかり検査することなのです。

その際は、まずもってクリニックでもできる心電図、負荷心電図、24時間心電図、心エコー検査、採血検査が有用となります。