コラム

JunJun先生の第2回 Jun環器講座

心筋梗塞

循環器内科 中川 順市

心臓の病気の中で、皆さんがよく名前をご存じで、かつ恐ろしいというイメージをお持ちの病気の一つに、この“心筋梗塞”があると思います。確かにこの“心筋梗塞”は、病気の中では日本人の死亡原因第2位である"心疾患”の代表格といってもいいでしょう。でもこの病気がなぜ恐ろしいのか?実際どういう病気なのか?この病気になったら本当におしまいなのか?どうすれば予防できるのか?ということについて、実はよくご存じでない方もおられると思います。そこで、数回に分けて、この病気について書いてみたいと思います。

第一回:“心筋梗塞”はどういうところが恐ろしいのでしょう
日本人の死亡原因の第一位は言わずと知れた“がん”ですね。でも、これはすべての臓器に生じる“がん”を総じての統計であり、もし臓器別に死亡原因を見れば、この“心疾患”がその第一位となります。もちろん心臓の停止が人間の死でありますから、どのような疾患であってもその終末状態である心停止をもって死因を“心疾患(心不全)”とすれば、“多いのは当然”と思われる方は多いかも知れません。実際、死亡診断において、そのような傾向があった時代がありましたが、現在は改められてきている中、それでも“心疾患”による死亡は増えている状況であります。

次に死亡状況(亡くなり方)に注目すると、いわゆる"突然死”の原因の一番は 表題の“心筋梗塞”になります。この死亡状況においても“がん”と比較しますと、“がん”はたとえ治癒・治療不能な状況であっても亡くなるまでにある程度時間がある場合が多いと思われます。その間にこれまでの人生を振り返ったり、やり残したことをやったり、家族にいろいろなことを伝えておくことも可能でしょう。ただ近い将来やってくるであろう“タイムリミット”に対する不安や恐怖に対する思いは、当事者でないと計り知れないとは思いますが…。

でも“心筋梗塞”による死亡の多くは突然死~1週間以内の死亡が圧倒的に多いのです。そして治療法が進歩した現在でさえ発症後の死亡は30~40%になります。
そうです、“心筋梗塞”においては “昨日までは元気で、普通に生活していた方が、今日はこの世にいない”ということが結構な比率で起こるのです。ご本人にとってはヒタヒタと迫りくる死への恐怖・不安、そして苦しみを感じる期間が短くて、ともすれば何も感じないまま、いわゆる“コロッ”と逝ってしまう状況であり、ある意味“楽”なのかもしれませんが、残された者にとってみれば、あまりにもいきなりで何の準備も覚悟もできないまま大切な人がいなくなってしまうという状況となるのです。これは、年齢的に人生もそろそろ最終段階で、ご本人もご家族もある程度覚悟ができておられる方にとっては、いわゆる“理想的な死に方”なのかもしれませんが、働き盛りの若い方にとっては、ご本人も志(こころざし)半ばで悔しいことでしょうし、残されたご家族にとっても“大事な一家の大黒柱”を突然失う精神的、経済的痛手は計り知れないものがあります。

そして、この“心筋梗塞”、かつては高齢者の病気との認識が強かったのですが、最近ではまさにこの働き盛りである30~40代の比較的若い年代の人に増えてきているのです(私も他人事ではありませんが…)。その理由は、その方々の幼少期からの食生活、およびそういう方々における心筋梗塞の起き方の特徴にあると言われています。

(続く)