コラム

JunJun先生の第10回 Jun環器講座

ATIS(エイティス)という言葉を御存知ですか?

循環器内科 中川 順市
 動脈硬化やそれによるプラーク(血管の壁の内側にアテロームと呼ばれるコレステロールの塊が溜まったもの)の破綻が原因となって出来た血栓が、脳や心臓、そして足の動脈に詰まったり、詰まりかけたりする状態により生じる病気、これらを総称して“ATIS(エイティス:AtheroThrombosIS=アテローム血栓症)”と言います。
すなわちこの状態が、① 心臓の冠動脈に起これば、心筋梗塞狭心症、② 脳の動脈に起これば脳梗塞一過性脳虚血発作、③ 足の動脈でおこれば下肢(末梢)動脈閉塞症間歇性破行(歩くと足の筋肉に行く血流が少なくなり痛みが出て、休むと改善する状態)となるわけです。
 上記の ①、②、③は、各々起こってしまってからでは、なら循環器科心臓血管外科なら脳外科神経内科なら血管外科、というように大きい病院の異なる専門科による各々の専門的治療が必要となってしまいます。しかし、起こす前、あるいは専門的治療が終了してからの再発予防においては、上記①、②、③は、結局、発症した血管の場所と影響を与えた臓器が違うだけでその病態の過程や原因、治療法は共通しており、且つ、専門病院でなくても対応できることから、最近の医学会ではこれらの病気を“ATIS(アテローム血栓症)”としてひとくくりにして、各専門科・専門学会の垣根を越えて、また専門病院と診療所の連携においてその発症予防・再発予防・治療に力をいれているのです。
 では、なぜそのような流れになってきたのでしょうか…、その背景となっているものに、日本人の死亡原因介護が必要となる原因についての統計があると思われます。
 厚労省国民生活基礎調査「日本人の主な死因別死亡数の割合(2010年)」における第一位は悪性新生物(がん)(30%)、第二位は心疾患(16%)、第三位は脳卒中(11%)、第四位は肺炎(10%)ですが、第二位の心疾患の中では、ATISのひとつである心筋梗塞関連による死亡が多く、また臓器別、そして突然死の原因疾患とすれば第一位です。第三位の脳卒中では脳出血は減りATISのひとつである脳梗塞が増えています。第四位の肺炎においても、脳梗塞の後遺症からくる嚥下障害(飲み込みの障害)が原因の誤嚥性肺炎(食べ物・飲み物・唾液が肺へ入ってしまうことによる肺炎)が大半を占めています。これらATISに関連のある二、三、四位をたせば一位のがんを上回ります。「介護が必要となった主な原因(2010年)」においては、第一位は脳卒中(21%)、第二位は認知症(15%)となっていますが、ここでもATISのひとつ脳梗塞を含む脳卒中が第一位、そして第二位の認知症も脳血管の動脈硬化が原因として決して無関係ではありません。
 以上から、これらの結果をATISの視点から見た場合、現在の社会において重要なこの二つの統計の中で、原因の上位3分の1以上がATISに関連のある疾患であると言えます。
 ただ、それは逆に、血管の詰まる病気を、たとえそれが単一で軽症であっても、心臓・脳・足部位別臓器別に捉えるのではなく、ATISという一つの全身的な血管病として捉え・意識することにより、同じ方法で、上記統計にあるような重篤な原因疾患を複数、同時に予防・治療できることとなり、日本国民の死亡率の減少、介護予防に大きく貢献できる可能性があると言えるでしょう。