コラム

ペイ・フォワード ~次へ渡せ~

難波直子
先日、久しぶりに感動するビデオを見ることが出来ました。今日は、そのビデオの感想とそれに関する事で、日頃私が考えている事、心がけている事についてお話しさせて頂きたいと思います。



そのビデオのタイトルは、「ペイ・フォワード」。
内容は、中学生の男の子が、社会科の時間に先生から、「世界を変える方法を考えて、それを実行してみよう。」という課題が出されました。
彼が考えたのは、他人から厚意を受けたら、その人に返すのではなく、次に渡して行くというものでした。
目先の利益だけを追い求め、物質的な充実感で幸福を得、自分の喜びだけを追求している現代の社会で、少年のように人の為に尽くす事に喜びを感じる人が多くなれば、温かい、明るい未来が開けるのではないでしょうか。

少年は、テレビのインタビューの中で、次の様な言葉を述べていました。
「日々暮らしの中に慣れきった人達は、良くない事もなかなか変えられない。きっと、だからあきらめる。でも、あきらめたらそれは負けなんだ。すごく難しい事なんだ。周りの人がどういう状況か、もっとよく見る努力をしなくちゃ。守ってあげる為に、心の声を聞くんだ。”人 ” を立ち直らせるチャンスだ。」

” 人 ” を立ち直らせるなんて私には・・・とてもそんな力などないと思ってしまいます。でも、人の心を真に動かせるのは、金銭でも権力でもないのです。真心です。
思いやりの気持ちです。簡単に誰にでも出来る事、それは心の込もったあいさつや言葉です。

近所に、いつも気持ちの良いあいさつを交わしてくれ、こちらも気持ちが明るくなり、元気にしてくれるおじさんがいます。でも、ある時商売の方もなかなかうまくいかず、気力もなくすごく落ち込んでいた時、私はそんな事情を知る事もなく、いつも通りにあいさつを交わしてくれたのですが、なんと私のあいさつでやる気を取り戻せた、とお礼を言われたのです。
私のあいさつ1つでも、人の役に立てたのだと思うととてもうれしく、勇気と自信が湧いてきました。
あいさつは、どんなに忙しくてもたた数秒で済むものです。心を込めて何かが失われるものでもないのだし。やればまず、自分自身が気持ち良くなれるし、他人も幸せに出来るのです。

電話になるとなおさら、相手の顔が見えないだけに、話し方、声のトーンで相手の心が見えてくるものです。これは特別の事情かも知れませんが・・・、
この春、姪が高校合格の知らせをくれた時、「おばちゃん、受かったよ、ありがとう。」
たったそれだけの電話でしたが、明るい声で、声全体に今までの努力が実った。という全身の喜びが素直に表現され、心にしみわたってきました。その日一日中、私はとても幸せな気分で過ごすことができました。

言葉は、昔から言霊とも言われ、口先だけではなく心情の込もった言葉は、魂の息吹であり、人を動かすことが出来るのです。

私の心に残る一言の中に、私の考えを変えさせ、それからの日常生活で常に意識するようになった言葉があります。それは、長女の小学校の校長先生から聞いた、
「今、この瞬間は二度と来ない・・・・。」という言葉です。
三人目の子育てに疲れていた時期でした。子育てはとても大変です。でも、考え方を変える事が出来たのです。肩が凝っておんぶが辛くても、今してあげなければ何年か先にはもうさせてもらえないのです。子供の成長は早く、その時しか出来ないことがたくさんあるのです。そう考えると、嫌なこと、やりたくない時でもプラス思考に変えられたのです。
そうして、「今、この瞬間を大切に生きる」という事が、だんだん身についていきました。

自分自身に与えられた事、今出来る事、今しか出来ない事に対し、させていただけるという感謝の気持ちを持って、精一杯頑張るよう心掛けています。そうする事が、とても心地よく感じられるようになってきました。
人生にも、仕事にも、いつも完璧を追い求めてきたように思う自分ですが、この歳になって完璧などないと分かってきました。むしろ失敗の連続です。けれど、この経験が人生を豊かにし、その中でも学び知恵をつけ、人として成長出来るのです。同じ失敗は何度も繰り返さず、自分の納得できる人生を歩んでいきたいと思っています。
その中で思うことは、人は周りの人々に支えられて生きているのです。決して一人で生きていけません。生かされている事に感謝し、不平不満を持たず心が満たされていれば、自然に思いやりの心が生まれます。自分が人から優しくされたり、元気や勇気をもらった時、ビデオの少年のように”次に渡せ”を常に頭に置き、自分の受けた厚情を周りの人に一人でも多く分け与えていけるようになりたいと思います。

一人の力は小さくとも、それが集まれば大きな力となり、輪と和が広がって行く事を願っています。