コラム

在宅介護の恩恵

ケアマネージャー 西脇伸子
私達は、在宅介護の現場で、ご家族の方からこんなお話しを頂戴したことがあります。このご家族は縁あって4世代が同居し、孫の若嫁さんが介護をしておられた時のお話しです。



大おばあちゃんが、ある日急にぼけてしまい、徘徊でご近所に迷惑をかけたり、夜中大声で騒いだり、何で私だけがこんな辛い目に遭うのか。おばあちゃんを恨むこともありました。
その後風邪がもとで寝たきりになり、それでもオムツをはずすなどは直らなかったのですが、ある日オムツから便を取り出して、枕カバーの中にしまい込み、ついカーッとなって、大きな声で怒鳴ってしまったことがありました。

何だか急に悲しくなって、泣きながら汚れたパジャマを着替えさせていると、急に大おばあちゃんは、私の顔をのぞき込みながら、
「お母さん、誰が泣かせたの?」
と、聞いてきたのです。
そして、とうとう大おばあちゃんも泣き出してしまったのです。子供みたいに・・・・。
その時、なんだか許せる気がしたんです。この人、好きでこうなったわけじゃないんだなって・・・。

それからしばらくして亡くなったのですが、その当時保育園だった子供が、小学校を卒業するとき、
『 お母さんやお父さんが、大おばあちゃんのために一生懸命お世話するのを見て、お父さんやお母さんの子でよかったと思った。』
という作文を読んで、大変な経験でったけれど、おばあちゃんは寝ながらでも、私や曾孫に人として大切なことを教えてくれていたんだな。と思いました。

このお話を聞かせていただいたときに、どんなに小さな子供も、家族とともに学び、そのことを通じて、人間の価値観や、お互いが補い合って生きることの意味を身につけていくような気がしました。
そして、最後にこの方が、「 おばあちゃんの介護という通過点がなければ、今の自分はなかった」と。

在宅介護は肉体的・精神的な重圧感と疲労感、空しさが大きいことも事実です。ただ、それだけではない。そう、いつか見えないものの大きさに気付く事があるのではないでしょうか。



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