コラム

水槽からのメッセージ

難波 直子
私は、船戸クリニックの水槽を管理させていただいている者です。
この度は、院長先生と、博子先生の暖かい配慮により、立派な水槽に作りかえていただいたことに、心より感謝申し上げます。

お二人の心のこもった水槽から、多くの人のメッセージが聞こえてきます。現代社会の中で私たちが忘れかけていたものを、取り戻させてくれるような気がします。
「どうして水槽の中身が川魚なの?もっときれいな魚の方がいいのに…」と思われた方もいらっしゃると思います。確かに、川魚は地味ですが、そこに、私たちが考えるべきことの原点があるのではないでしょうか…。

私たちはきれいな物、高価な物、上を見たらきりのない、物質的な欲望をもっています。
でも、はたして物の価値、人の価値は外見だけのものでしょうか。
遠くのものを追いかけるばかりでなく、自分の足元をしっかり見つめることが必要なのではないでしょうか。この水槽に入っている川魚は、現在養老及び、西濃地方で生息している魚たちの、ごく一部です。このあたり一帯は、ほんとうに自然が豊かで、全国的にも珍しく、貴重な魚が、いまだ生息している数少ない地域です。そんな所に住んでいる自分達に、誇りを持ちましょう。

しかし、そんな現実とは裏腹に、自分達の生活の便利さ、快適さのために、どんどん自然が破壊され、魚たちは、住む場所を失っています。
ひと昔前までは、自分達の食をささえてくれ、共に生活をしてきた魚たちです。この魚たちに感謝し、郷土の自然を愛し、守り続けていきたいと思います。たまにはゆっくりと川を覗き込むような心のゆとりを持ちたいものです。
 我がふるさとは、心のふるさとでもあり、自分の生まれ育った環境には、やさしさ、安らぎを感じます。魚たちも何もレイアウトしていない水槽にいれた時と、自然の環境に近づけた水槽の中に入れられた魚たちの動きは生き生きとしているように見えます。
 私たちもやはり、人工的に造られた物の中より、大自然の中で生活している方が、より心も安定し、伸び伸びと暮らせるのは、すべての生物に共通することではないでしょうか。
水槽の透明感のある水は、心に安らぎを与えてくれます。澄みきった心を持つ人は、まわりの人々に感銘を与えてくれます。素直で澄んだ心をいつまでも持ちつづけたいと思います。