コラム

少食日記2 甲田先生ごめんなさい

船戸博子
インドラダックに旅行をしてきました。
ヒマラヤ山脈とカラコロム山脈の間をインダス川の流れがうねり、山の湧き水があるところ、緑の帯となり、乾いた山肌にこんもりと木々のパッチワークが張り付いているオアシス。

ケシの花が植えられ、遠く乾いた大地は紫の花に染まっている。美しく、静かな土地。
アンズが黄色くたわわに実る彼の地は、仏様とともにありました。

通り過ぎる旅の人間の目には、豊かなパン、ジャム、カレーが出てきます。

朝は、カリッと焼いた薄切りのトースト、この乾燥した土地でとれる小麦粉のせいか、パンもビスケットもカリカリッ、サクッサクッとして、食感は軽く、たっぷりとアンズのジャムを塗り、ミルクティーとともにいただきます。

お昼はホテルの外でいただきました。
パァッパは麦の粉と大豆のふすまを入れた団子です。
野口法蔵師のご案内でお邪魔した、リゾンの尼寺でいただきました。
うれしそうにはにかみながら、少女たちが差し出してくれるパァッパは、噛みしめて、のどの奥深く味わうものでした。ヒマラヤの奥地の風が吹き抜けるお堂でいただくパァッパは、毎日有り難く食べていける、ふくよかな味がします。

夜は、ホテルのカレー料理が7~8種類並びます。
好きなだけ取っていきます。カレーが「おいしい!」と思ったのは2日ほどでした。
3日目には、スパイスのにおいを嗅ぐと、胃液のすっぱさがこみ上げてきます。お味はおいしいのに・・・。

日本から持参のレトルトのおかゆと梅干しとお味噌汁がテーブルの上に並びます。
このおかゆの包み込まれるような甘さ、高地で張り詰めた気持ちが一口で緩んで、お互いに優しく語り合えます。

日本から遠く離れた場所、いつも自分がいる場所から遠ざかれば遠ざかるほど、人の手が加わっていない食べ物が、おいしく自分に入ってきます。

今回はアンズの甘さ、アンズの種の渋さ、パァッパのもっちり感、そしてヒマラヤの水の切るような冷たさでした。

少食とは、とてもいえない食事を食べました。
ものめずらしさもありましたが、旅の日々の不安感がたくさん食べた最大の理由です。

ーー甲田先生、ごめんなさい。ーーーーーー


男:体重72kg.、女:体重53kg.(アンズの食べ過ぎの下痢により、痩せました)