2025.11.01

病を治す医療と、人を整える食養生 ~がんと共に生きるための食養生~

船戸 博子

― がんと食事 ―
最近、私自身が意識していることが少しずつ変わってきています。
・生きていることの不思議
・どうして病気になるのだろう
・どうすれば自分を大切にできるのだろう
・いつか来る自分の終わりをどう受けとめるか
そんなことを意識しながら、日々患者さんと向き合ったり講座に臨んでいます。
「がんになったら何を食べたらいいの?」という質問をよく受けますが、「何を食べるか」ということも大事ですが、「なぜそれを食べるのか?」という考え方を知ることです。

―がんの仕組みを知ることから始めようー
―がんの仕組みを知ることから始めようー
「がんはどうして大きくなるの?」
「なぜ転移するの?」
その仕組みを理解することが、まず第一歩です。
結果を出すためには、エビデンス(科学的根拠)と理論をしっかりと学ぶことが大切です。
中医学(東洋医学)では「薬食同源」という考え方がありますが、「食べ物=薬」という考え方だけでがんを語るのは危険だと感じています。なぜなら、中医学は体の中の具体的な数値をあらわす、血液データを診ないからです。
舌の色や脈、顔色、爪、髪などを観察する「望診」は大切ですが、同時に血液検査で今の体の代謝や栄養状態を読むことも、とても大切なのです。
たとえば、どんなに良いたんぱく質を食べても、それを分解して吸収するために必要なビタミンB群が足りなければ、うまく代謝が回らず栄養になりません。ですから私は血液データを丁寧に読み解き、「たんぱく質・脂質・糖質・ビタミン・ミネラル」の代謝の流れを見ながら、サプリメントではなく“食事”で体を整える方法を提案しています。
その点では、現代医学と中医学を両輪として人の身体を走らせています。

―がんは「環境」を選ぶ―
がんは体の中の「環境」によって進行状態が変わります。
慢性的な炎症、高い血糖値、乱れた腸内環境――これらはすべて、がんの好む環境です。
ですから、がんが嫌うような体内環境にしていくことが大切です。
・糖のとりすぎ…中医学では「濁」を生み、体を重くして脾を弱らせると考えます。
一方、現代医学的に見ると、血糖値の上昇がインスリンやIGF-1という成長因子を活性化させ、
がん細胞の増殖を助けるということがわかっています。
・加工肉(ハム、ソーセージ)…中医学では比較的よく使われる食材ですが、こういったものは肉だから熱毒を入れると考えます。一方現代栄養学では、加工肉はその製造過程で亜硝酸塩が使われており、これは発がん性物質であるといわれるので避けるべきとなります。
・トランス脂肪酸…中医学では、「気血の流れを阻害する」といわれていますが、現代医学では慢性炎症の原因となり、細胞膜の機能が置き換わることでエネルギー交換ができなくなるため、増殖を助長すると考えられます。
中医学と現代医学のがんに対しての接点があるとしたら、がんは環境を選ぶということとなるのです。
最近は、これまでの自分の意見や考え方、治療方法とは違う方向性になってきているようにも思うというお話をしましたが、それは、漢方医であって漢方医ではないというところなのかもしれません。手段として漢方薬を処方したり、食事の指導をしますが、一般的な人の考える薬膳の概念からは少し外れたという実感もあります。しかしながら、「生きる」ということにフォーカスしているからこその診察なのかもしれません。
がんが大きくなったり、進行しているのは、その人の免疫力にかかってきます。免疫細胞が働きやすい環境は、個別の力であり、パーソナライズされているところというのは、伝統医学は得意です。一方、今、病気がどんなステージにあって、今後どんな状況を引き起こしていくか?を予想しそれに対して病の方向性に対しての作戦を立てるのは圧倒的に西洋医学が強いのです。だけどその作戦を立てたとしても、その作戦がうまく働くか働かないかは、その人の体力、免疫力にかかってくるものです。伝統的医学をもってして、人の生きる力を強くし、西洋医学の力をもってして病を弱くする、そこが今のスタンスなのかもしれません。人の中に病があるのだから、もちろん現代医学と中医学は両輪となって走ります。

―食べものの選び方、食べ方 がんが嫌う環境を作る―
1、低糖質 
2、減塩
3、高たんぱく
4、オメガ3の油を摂取する
5、緑黄色野菜、きのこをしっかりと摂る
6、乳製品を摂らない
7、調理方法は、ゆでる・蒸す・煮る 
8、免疫力アップにつながる食材を積極的に

これらを詳しくお伝えすると
1、糖質を減らす理由
・がん細胞は糖が大好き。糖のとりすぎは炎症と酸化を起こす
・インスリンとIGF-1が“増殖スイッチ”になる
・腸内環境の悪化にもつながる
2、減塩にする理由 
調味料としての天然の塩がいいとか、人工の塩がダメだとかいうことではなく、Na(ナトリウム)の過剰摂取が、慢性的な炎症を引き起こし、がんの発生リスクを高めることが問題となります。そのために天然のだしを使う。特にオメガ3の入っている青魚を主体にしてだしをとることがいいのです。
また、減塩するには、発酵酢(酢酸)・香辛料を上手に使うことをおすすめします。避けるものは、干物・漬物・佃煮・ハム・練り製品。また、顆粒だし・液体出汁は、グルタミン酸ナトリウムが入るので使用を控えます。
3、たんぱく質は1日50g体重あたり1.2g~1.5gで、毎食、手のひらサイズくらいのたんぱく質をしっかりと摂っていきましょう。
がんがある人は、四つ足の動物を食べるのはやめたほうがいいです。四つ足の肉は飽和脂肪酸が多く含まれます。また、単球/マクロファージは感染症から体を守る自然免疫の重要な一部でありますが、単球/マクロファージが飽和脂肪酸を食べて血管壁にくっついてしまうため、がん細胞を見つけて「ここにがんがいるぞ」と教えてくれる単球の数を減らしてしまうのです。また、肉を食べてアミノ酸が分解して肝臓で再合成されるのですが、分解から再合成の際にアミノ酸の配列にミスコピーがおこりやすくなってがんが発生しやすくなります。赤身肉は、腸内の悪玉菌を増やしやすくなり、体の中にとって、体に良くない毒性物質をちょっと作りやすくなります。肉を食べるのであれば、にわとりの肉は飽和脂肪酸が少ないからいい。また、魚の中でも、サバやイワシなどの青魚は特におすすめです。青魚には「オメガ3脂肪酸(EPAやDHA)」がたっぷり含まれていて、これらは体の中で作ることができない必須脂肪酸です。炎症を抑えたり、血液の流れを良くしたりして、体を守ってくれます。だから、オメガ3が豊富な青魚がおすすめです。あと、卵は1日1~2個。それから豆類も食べていただきたいです。
4、トランス脂肪酸を含むものを控える理由として、・トランス脂肪酸は、慢性炎症の原因となります
・細胞膜がトランス脂肪酸に置き換わることで、エネルギーの交換ができなくなってしまうため、がん細胞の増殖を助長します
5、スープは、すまし汁よりもヒポクラテススープがいいと考えます。ヒポクラテススープとは、古代ギリシャの医師ヒポクラテスにちなんで名付けられた、特定の野菜を長時間煮込んで作るスープです。このスープは、がん患者さんのためのデトックス(解毒)と栄養補給を目的として、食事療法の中心に据えられています。
6、乳製品をすすめない理由としては以下のことがあげられます。
・成長を促すホルモン(IGF-1)を増やすことがある
・ホルモンのバランスを乱すことがある
・腸内環境を乱すことがある
・飽和脂肪酸が多い
7、調理方法によって食材の酸化の進み方が変わります。「ゆでる・蒸す・煮る」に比べて「焼く・炒める・揚げる」は食材が酸化しやすくなります。
8、免疫力アップにつながる食材も食べてください。
・レスベラトロールは炎症を抑える
・ケストースは腸から免疫を支える
・ビーポーレンは栄養面から免疫をサポートする
それぞれが違う角度から“免疫バランス”を助けてくれる食材です。

―デザイナーズフードピラミッド― 
デザイナーズフードピラミッドとは、アメリカの国立がん研究所が主導した「デザイナーフーズ計画(Designer Foods Program)」の一環として発表されたもので、主にがんの予防に効果があると期待される植物性食品(野菜、果物、スパイスなど約40種類)を、その効果の期待度順にピラミッド型にまとめた図です。

ピラミッドの構成(代表的な食材)
〈第1層(最上段)〉
 がん予防効果が最も高い食品
 にんにく・キャベツ・大豆・しょうが・にんじん・セロリ・カンゾウ など
〈第2層〉
 がん予防に役立つ食品
 かんきつ類・玉ねぎ・玄米・全粒小麦・ブロッコリー・カリフラワー・ターメリック・芽キャベツ・トマト・ナスなど
〈第3層(下段)〉
 バランスをとる食品
 じゃがいも・ハーブ・アサツキ・キュウリ・大麦 など

―パーソナル薬膳―
1、「おくすりなごはんを食べていただく」一般的なアンチキャンサーフード(5つの条件・低糖質・減塩・たんぱく質食・良質な油・緑黄色野菜)
2、その人の自身の血液を分析して、たんぱく質・糖質・脂質・ビタミン・ミネラルがどうなっているかを診た上での食事
3、漢方的な性質を見て証を判断して証に基づいて食材を選んでいく 

西洋医学には「病を治す力」があり、中医学には「人を整える力」があります。
がんの食事に、これだけ食べればいいという正解はありませんが、体の声を聞きながら、無理なく整えることはできます。
糖を控え、塩分を整え、良い油と旬の野菜を取り入れること。
そして、自然の恵みを味方にすること。
それは、がんを遠ざける特別な療法ではなく、がんが育ちにくい体を育てる日々の積み重ねです。
今日の一皿が、あなたの細胞をやさしく整え、明日を生きる力になります。

―参考資料―
ヒポクラテススープの作り方

・材料
 じゃがいも 2個 トマト  3~4個
 玉ねぎ  1個  セロリ  2~3本
 長ねぎ  1本  にんにく 4~5片
 パセリ  少量

・作り方

 ①じゃがいも、トマト、玉ねぎ、セロリの茎、長ねぎ、にんにく、パセリはよく洗い、すべてひと口大に切る。じゃがいもは皮をむかず、玉ねぎとにんにくは皮をむく。

 ②鍋に、①を入れて全体量が隠れるくらいまで水を入れ、蓋をする。強火にして煮立ったら、弱火にして2時間ほど煮る。

 ③②のスープが冷めたらミキサーやジューサーでペースト状態にする。

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