2026.07.08

優佑先生の人生を楽しく歩く vol.4 -「座りっぱなし」は新しい喫煙? 健康寿命を延ばすために大切なこと-

船戸 優佑

こんにちは。船戸クリニック副院長の船戸 優佑です。
突然ですが、皆さんは1日のうち、どのぐらい座っているでしょうか?テレビを見ている時間、新聞を読んでいる時間、車の運転、スマートフォン、パソコン作業……。実は現代人は、起きている時間の半分以上を座って過ごしていると言われています。私は循環器内科医として多くの患者さんを診ていますが、「運動しなくてはいけないのは分かっているけれど、なかなか続かない」とおっしゃる方がたくさんみえます。しかし最近の研究では、運動不足だけではなく、「長時間座ること」そのものが健康に悪影響を与えることが分かってきました。今回は「座ること」と健康についてお話ししたいと思います。
 
人間の体は動くように作られている
私たちの祖先は何万年もの間、狩りや採集をしながら生活していました。食料を探し、歩き、運ぶ。そうやって生きてきたため、人間の体は「動くこと」を前提に作られています。
ところが現代社会ではどうでしょうか。車で移動し、椅子に座って仕事をし、家ではソファに座ってテレビを見る。便利な社会になった反面、私たちは驚くほど動かなくなりました。
本来動くために作られた体を長時間動かさない。それが少しずつ体に負担をかけていくのです。
 
座りっぱなしは体に何が起こるの?
私はよく患者さんに、「体は車と似ていますよ」とお話しします。車は長期間動かさずに置いておくと、バッテリーが弱り、タイヤも傷み、あちこちに不具合が出てきます。人間の体も同じです。長時間座ったままの状態が続くと、
・筋肉が衰える
・血流が悪くなる
・血糖値が上がりやすくなる
・血圧が高くなりやすくなる
・動脈硬化が進みやすくなる
と言われています。
さらに最近の研究では、1日の座っている時間が長い人ほど、心疾患や脳卒中、糖尿病のリスクが高くなり、寿命も短くなることが分かってきています。
私は心不全や心筋梗塞の患者さんをたくさん診てきましたが、病気になる方の多くは、何年も前から少しずつ体力が落ち、筋肉が減り、活動量が減っています。病気はある日突然やってくるように見えますが、実は何年も前から準備が進んでいることが多いのです。
 
30分に1回3分動く
座りっぱなしが良くないことはお話しましたが、では具体的にはどのぐらい座りっぱなしでなければよいのでしょうか。おすすめされているのは、30分に1回、3分だけ立って歩く。難しければ1時間に1回、5分だけ歩く。これだけでも血糖、血圧、血流には良い影響が期待でてくると言われています。おすすめの方法としては、
・テレビCMの間に立つ
・1時間に1回トイレやお茶で歩く
・電話は立って話す
・新聞を1面読んだら立つ
・食後は家の中を3〜5分歩く
などが、あります。どれも工夫しだいで生活に馴染ませる事ができると思うので、ぜひ意識してもらって、最終的には習慣にしてもらえればと思います。
 
運動も大切、でも「座り続けないこと」も大切
ここで誤解してほしくないのは、「座る時間を減らせば運動しなくて良い」という話ではないことです。運動習慣のある方は、ぜひそのまま続けてほしいですし、ない方は運動習慣も考えて欲しいです。私は心臓リハビリテーションを専門にしていますが、運動ほど多くの病気に効果があり、副作用が少なく、費用対効果の高い治療を他に知りません。実際、運動習慣がある人ほど健康寿命が長いことが分かっています。その一方で、最近分かってきたのが、「運動をしていても、残りの時間をずっと座っていると健康への悪影響が残る」ということです。例えるなら、運動は貯金です。座りっぱなしは出費です。毎日運動という貯金をしていても、長時間座り続けるという出費が続けば、その効果が少しずつ減ってしまいます。つまり、「運動すること」と「座りっぱなしを減らすこと」の両方が大切なのです。
 
一人では続かない方へ
とはいえ、「運動が大切なのは分かったけれど、一人では続かない」という方も多いと思います。それは決して意志が弱いからではありません。人間は仲間がいる方が続けやすい生き物だからです。当院の隣には、病気を治すことを目的としたメディカルフィットネス「ココフィット」があります。ここでは、生活習慣病改善のための運動療法を一人ひとりの体力に合わせて受けることができます。運動が苦手な方や体力に自信がない方でも無理なく続けられるよう工夫されていますので、興味のある方はぜひお気軽にご相談ください。
私たちの体は、使えば元気になります。そして、少しずつでも動けば必ず応えてくれます。今日この通信を読んでくださった皆さんが、まずは立ち上がって少し歩いてみる。その小さな一歩が、5年後、10年後の健康につながるかもしれません。皆さんの人生が、より健やかで、より楽しいものになることを心から願っています。
それでは、また次回の通信でお会いしましょう。

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